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和菓子から紐解く南信州・飯田の文化

東西に南と中央の2つのアルプスが連なり、南北に天竜川が流れる南信州。
交通の要衝であった飯田では、さまざまな人や物が交流し、神楽や人形浄瑠璃などの芸能、茶の湯やお菓子の風習など、独自の文化が育まれました。
信州の小京都とも呼ばれた飯田の老舗和菓子店を訪ねれば、お菓子作りへのこだわりからこの地の風土や歴史が伝わってきます。
和菓子から紐解く南信州・飯田の文化

文政元年より受継ぐ銘菓「名代 大きんつば」
城下町の飯田の文化を築いた「和泉庄」の和菓子

古くから和菓子産業が盛んで、今もなお数多くの歴史ある和菓子店が存在する飯田市。
この飯田の和菓子文化を築いてきた老舗のひとつが文政元年創業の「和泉庄」です。
なかでも代名詞のきんつばは、多くのファンを虜にする全国的にも有名な逸品。

「もともとうちは飯田城主の御用菓子屋だったんです。献上用のお菓子が余っても、それを売ったり分けたりしてはいけなかった。そこで餡だけを炊き直したのが、きんつばのはじまりだといわれています」と教えてくれたのは七代目の庄司さん。

和菓子から紐解く南信州・飯田の文化和菓子から紐解く南信州・飯田の文化

厳選した小豆や不純物の少ない砂糖を使い、伝統の製法で丁寧に炊き上げた餡をごく薄い皮をつけて焼き上げるのが和泉庄のきんつばです。
「餡の甘さは控えめにしているんです。とにかく小豆の旨味がしないと駄目。素材の味が活きていることが重要なんですよ」と語ります。
このこだわりこそが「一子相伝の手造りの味」。まさに飯田の和菓子文化の伝統と誇りが詰まっています。

加藤 庄司さん和泉庄 加藤 庄司さん
「一子相伝の手造りの味」という創業190年以上の歴史を誇る老舗和菓子店の七代目。「美味求心」をモットーに小豆の旨味がしっかり活きたきんつばは、多くの人を魅了し続けている。


和菓子から紐解く南信州・飯田の文化

老舗菓子処がつくる和スイーツ「巣ごもり」
ホワイトチョコと黄味餡が出会って生まれた銘菓

巣ごもりの誕生は約半世紀前。まだホワイトチョコが珍しいころ、それを使って新しいお菓子をつくれないかと考えたことからはじまります。
チョコと相性が良い卵黄をベースにした餡を使った新感覚の和スイーツは、瞬く間にヒット商品に。

和菓子から紐解く南信州・飯田の文化

「お客様を飽きさせないよう、いつも新しい話題をつくりたいんです」と語る忠幸さんは、その後もさまざまな巣ごもりを発案。
決して留まらず、さらなる進化を遂げているのが銘菓と呼ばれる所以かもしれません。

横前 忠幸さんいと忠 横前 忠幸さん
巣ごもりを生み出した父を継ぎ、現店主に。まず手掛けたのは旨味を損なわずに甘さを半分に減らすこと。試行錯誤の末、今の味が生まれ第20回全国菓子大博覧会で名誉金賞も受賞。


和菓子から紐解く南信州・飯田の文化

お祝い事の定番品「赤飯饅頭」は南信州伝統の名物
和菓子屋さんらしい味わいとカタチを

贅沢品の赤飯をお殿様に見つからずに隠れて食べられるように考案されたといわれるのが南信州名物の赤飯饅頭。

蒸し立てのおこわを饅頭生地で包んだ一風変わったお菓子で普段のおやつにはもちろんのこと、紅白あるので結婚式や出産、入学など慶事のお使い物としても愛用されています。
この名物は、「田月」でも創業以来の定番商品として受け継がれています。

和菓子から紐解く南信州・飯田の文化

「店ごと味付けや大きさが違っていて、お土産用などは大きめなものが多いですね。ウチは和菓子屋らしく少し小ぶりに作ってるんですよ」とにこやかに話す茂さん。
ほんのりとした甘さと香りが楽しめる上品な味わいに老舗のこだわりを感じます。

城田 茂さん田月 城田 茂さん
創業100年の老舗を継いだ四代目の若旦那。「お菓子屋さんで飯田の街づくりを」と、映画の会や焼肉ロックフェスの開催などユニークな地域活動にも積極的に参加している。


和菓子から紐解く南信州・飯田の文化

南信州ならではの食材と味わいをお菓子で表現
名物の栗や塩を使い地域に根ざしたものを

飯田市内に3つの店舗を持つ創業100年以上の和菓子屋。「ここは水が美味しいし果物も多い。ここでしか出せない味もあるので地域に根差したお菓子をつくりたいですね」と語るだけあり、地元の特産品を使ったお菓子が所狭しと並びます。

和菓子から紐解く南信州・飯田の文化

「栗里亭(りつりてい)」は20年以上愛される看板商品で隣接する中津川名物の栗きんとんをわらびもちで包んだ逸品。大鹿村の山塩を使った「山塩羊羹」もここならでは。
近年では洋菓子の要素を採り入れた新食感の和菓子も人気です。

原 将人さん船橋屋 原 将人さん
洋菓子のエッセンスを採り入れた和菓子にチャレンジする6代目。約10年単位で時代にあわせてレシピを変えていくのが船橋屋流。新しい味に期待し、楽しみにしているファンも多い。

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