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地域の風土が生み出した宝物 信州の滋味、伝統野菜を味わう

地域の風土が生み出した宝物 信州の滋味、伝統野菜を味わう

固有の風土の中で育まれる伝統野菜。普通の野菜とは異なる味・香り・カタチは、古くから地域の食文化に根付き、今も脈々と受け継がれています。

この地域の宝を守り、そして多くの人に知ってもらうため、長野県では、平成19年に「信州伝統野菜認定制度」を創設し、現在75品種がその選定を受けています。

これからは、根菜がおいしくなる季節。地域の人々の愛情が詰まった、信州の滋味をお楽しみください。

地域の風土が生み出した宝物 信州の滋味、伝統野菜を味わう

この地だからこそ生まれる愛らしい姿と独特の風味
“あまもっくら”を味わう坂城名物 ねずみ大根

多くの企業・工場が集積し、県内でも屈指の工業の町として知られる坂城町。一方、降水量が少なく小石混じりで排水性の良い農地が多く、普通の野菜の栽培にはあまり適さない土地柄でもありました。

しかし、その環境が、ここでしか作れない野菜を創りだします。それこそが「ねずみ大根」と呼ばれる辛味大根です。

地域の風土が生み出した宝物 信州の滋味、伝統野菜を味わう

「他の場所で作ると不思議と辛くなかったり、ねずみの形にならなかったりするんですよ」と小野さん。辛さのあとにほのかに甘さが広がる味覚は「あまもっくら」と表現され、この味わいが出せるのは坂城のねずみ大根だけなのだとか。

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そしてこの大根を使った名物料理が「おしぼりうどん」。大根をおろし、しぼり汁だけをつけ汁として使うという何とも贅沢な郷土料理で、大抵の人がそのあまりの辛さに驚くそうです。

お好みで味噌やネギを入れ、味をまろやかにしながら釜揚げうどんをいただくのがおすすめのスタイル。一度食べるとクセになる美味しさです。

小野晃一さん坂城町ねずみ大根振興協議会 副会長 小野晃一さん

新潟県出身で就職を機に坂城町へ。定年退職後は、百姓をしながら自給自足の生活をするのが夢だったそうで退職とともに農業の道へ。ねずみ大根をはじめ、さまざまな野菜を育て、直売所などにも出荷しています。


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地域を愛する想いが詰まった食物繊維も豊富な赤い漬物
里芋なのに主役は茎!?南木曽の伝統の味「あかたつ」

島崎藤村の小説『夜明け前』にも「紅いずいきの漬物」と記されている「あかたつ」は山深い南木曽町で古くから地域に根づく伝統野菜。

里芋の一種・唐とうのいも芋に分類され、芋の部分も普通にホクホクしていて美味しいのですが、本当のお目当ては“ずいき”と呼ばれる茎部分。

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かつてはどの家でも栽培し漬物にするのが当たり前でしたが、時代の流れとともに減少。その後、上の原地区で復活を図ったものの高齢化で継続が難しく、3年前より生産を受け継いだのが岩倉むらおこし組合でした。

「あかたつの茎は、食物繊維が豊富で腸にも良いんです。味噌汁や煮物に入れたりと、南木曽では家庭の定番食材なんですよ」と女性陣は口を揃えます。

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一方、「シャキシャキした食感はビールのおつまみにもあうんだよね」と男性陣。

最近は、地域の漬物を残したいと地元の高校生も「あかたつチャーハン」などのレシピを考案。地域全体で伝統野菜を盛り上げています。

岡田政晴さん岩倉むらおこし組合 組合長 岡田政晴さん

地域の伝統文化を残そうと25年前に設立した「岩倉むらおこし組合」には、現在、岩倉地区の有志15名程が参加。あかたつのほかにも、味噌やほお葉寿司作りなどにも取り組んでいます。

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