LANGUAGE

ライフスタイル・オブ・信州ライフスタイル・オブ・信州

東信州、日本一のくるみの里へ

東信州、日本一のくるみの里へ

話題のオメガ3脂肪酸のひとつであるα-リノレン酸が豊富なことに加え、ビタミン、ミネラル、たんぱく質、食物繊維など多くの栄養素が凝縮されたスーパーフードとして、改めて脚光を浴びているくるみ。

欧米では、「貴族の美容食」とも呼ばれ、人類が食用にしていた最古の木の実であるともいわれます。

そんなくるみ生産量全国1位を誇る信州の生産者と、くるみ文化を育む方々を訪ねてみました。

東信州、日本一のくるみの里へ

大陸のくるみが海を越えて出会い誕生した「シナノグルミ」
秋の収穫期を迎えた東御市のくるみ畑を訪ねて

国産くるみの約8割が生産されている長野県のメイン品種がシナノグルミ。多くが東信州で栽培され、中でも東御市は120人ほどの生産者がいる一大産地となっています。

古来より日本には、オニグルミやヒメグルミなどが自生し食されていましたが、実はそのルーツは全く別。遡ること江戸時代、中国からテウチグルミ(カシグルミ)が伝わり、全国で栽培が試みられました。日当たりが良く、少雨で水はけが良い土が合い、この地でくるみの産地としての歩みが始まります。

東信州、日本一のくるみの里へ

明治に入り、軽井沢へ避暑に訪れた欧米人が持ってきたのがペルシャグルミでした。地元の人々は、この品種の栽培も試しはじめ、大陸から伝来した2種類のくるみがこの地で出会うことに。そして自然交配が行われ、シナノグルミが誕生したのです。

「シナノグルミの特長は実は大きく、殻は薄くて味が良い。世界に誇れるくるみですよ」と花岡さんは言います。

東信州、日本一のくるみの里へ

木から落とし、拾って青い外果皮を剥いたくるみは、洗浄作業へまわります。「実はこの洗浄機、里芋を洗う機械のブラシ部分などを改良したものです」と花岡さん。東御市内には4 ヶ所にくるみのコイン洗浄機が設置されていて、誰でも利用できるのもくるみの里ならでは。洗ったくるみは棚へ並べて3週間ほど天日干し、実の隔壁がパキッと折れるようになったらいよいよ出荷となります。

今後の目標を聞くと「東御市にある約7500本のくるみの木を1万本以上に増やすことですね」と力強い答えが返ってきました。東御市では多くの家の庭先に“マイくるみの木”があって、おはぎ、麺のたれ、あえものと、くるみのあるのが日常なのだそう。地元の人々に愛されていることこそ、日本一の産地である理由なのかもしれません。

花岡澄雄さん日本くるみ会議
会長 花岡澄雄さん

「日本くるみ会議」は生産者だけでなく菓子店や販売店、行政や学校の先生など、くるみの振興を目的に活動する人々や団体が集まった組織。東御市を中心に現在は約40名が所属しています。

東信州、日本一のくるみの里へ

地元の特産品が作り出す全国の人々を魅了する味
小さな草笛で生まれた東信州名物「くるみそば」

草笛が開店したのは昭和36年。7坪12席の小さな店で何か名物をつくらねばと考案したのがくるみそばでした。

「幼い頃家の裏に大きなくるみの木があって、その木の下で接ぎ木作業をしていたお兄ちゃんが『将来このくるみがきっと有名になるよ』と話してくれた。それを思い出して作ったんだよ」と中村会長。

東信州、日本一のくるみの里へ

こうして誕生したくるみそばは、その予言どおりに、地域の文化と地産地消にこだわる中村会長によって東信州を代表する名物となり、現在は全国に広がっています。

中村利勝さん信州蕎麦「草笛」
会長 中村利勝さん

農家の6人兄弟の長男として東御市に生まれ、小諸市役所の観光課勤務などを経て、そば店経営を決意。奥さんと二人三脚ではじめた店が、現在では県内に8店舗を構える超有名店に。

東信州、日本一のくるみの里へ

古刹、前山寺で楽しむくるみおはぎのお接待
塩田平の情景と楽しむ鬼ぐるみのコクと四季の彩

信州の鎌倉と呼ばれる塩田平の前山寺で昭和35年頃から続いている「くるみおはぎ」のおもてなし。

かつて茶懐石の一品で出したところ、その評判が口伝えで広まり、天皇陛下や皇太子殿下も召し上がられた一品です。

東信州、日本一のくるみの里へ

「お客様を土地で採れたものでもてなしたい。そんな想いがはじまりなので、境内の鬼ぐるみや塩田平産のもち米など、ここで採れたものばかりなんですよ」と照子さん。おはぎの上には季節ごとに大根おろしや山椒味噌が添えられていて、四季を感じる味わいに心が洗われます。

河合照子さん前山寺
寺庭 河合照子さん

子どもの頃から祖母が作ったくるみおはぎをよく食べていたという照子さん。「境内の建物を変わらぬ姿で維持するのと同じように、祖母・母に続き、三代目として名物の味も変えずに継承したい」と話します。

Lifestyle of Shinshu