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ライフスタイル・オブ・信州ライフスタイル・オブ・信州

海なし県 信州で出会う、川魚の世界

海なし県

8つの県に囲まれた内陸県の信州。海こそありませんが、信濃川、木曽川、天竜川といった大河の源を生み出す豊かで清らかな水資源を有しています。その恵みは、イワナ、コイ、アユ、ワカサギ、ウナギなどの淡水魚を育み、山国ならではの食文化となっていきました。

ニジマス、イワナ、ヤマメ、信州サーモンなど「マス類」の生産量は全国一と養殖業も盛ん。信州には、海なし県ならではの魚への熱い想いがありました。

海なし県 信州で出会う、川魚の世界

海水魚に無い魅力を持つ信州ブランドの魚たち
「山国らしい魚を」の想いが生んだ信州サーモン・信州大王イワナ

日本一を誇るマス類の養殖業を支えているのが、卵・稚魚の供給、魚の開発・研究を行う長野県水産試験場。信州ならではの魚をという声を受け、約10年の歳月をかけ開発されたのが“信州サーモン”です。

「従来のニジマス養殖の設備や技術が活かせるよう、初めはニジマスの大型化を目指していたんですが、全国で同じような研究が増えてきて独自色が出しにくく、病気にもなりやすかった。そこで発想を変え、ニジマスと病気に強いブラウントラウトを交配したんです。両者の長所を受け継いだのが信州サーモンなんです」と経緯を語る降幡さん。

海なし県 信州で出会う、川魚の世界

近年は渓流の王様とも呼ばれるイワナの新たな養殖品種として“信州大王イワナ”も開発。身が締り旨みのある大型のイワナの特徴が色濃く継承されています。「せっかく信州に来たのなら、山国らしい魚を楽しんでほしい」という降幡さん。おもてなしの気持ちも信州の魚文化を進化させています。

降幡充さん長野県水産試験場
増殖部長 降幡充さん

信州サーモンの開発にも携わった降幡さん。「子どもの頃から犀川で釣りをしていたから、ニジマスは身近な魚なんです。高校時代も生物部・魚類班でしたからね。昔から魚が好きなんですよ」と語ります。

海なし県 信州で出会う、川魚の世界

そのうまさに誰もが驚く安曇野の新名物「円揚げ(つぶらあげ)」
湧水の里 安曇野で生まれた円(まる)ごといただくニジマス料理

日本のニジマス養殖発祥の地とも言われる安曇野。その理由はこの地を潤す清冽な湧水です。北アルプスの雪解け水を源とする伏流水は、一定の量と冷たさを保っていて、マス類の養殖に最適な環境をもたらしています。

かつてニジマスも人気の魚でしたが、手間を省いた料理が好まれたりマンション化が進んだりとライフスタイルが変化し、流通網の発達の影響も受け、魚自体の消費量は減少傾向。

そんな状況の中「川魚を食べてもらう方法はないかと悩み、妻に新しいお惣菜を作れないかと相談したんです」と語る正雄社長。

海なし県 信州で出会う、川魚の世界

料理好きだった民子さんは、ウグイやフナなどを二度揚げする郷土食をヒントに“円揚げ”を考案します。「最初はなかなか売れなくてね。でも試食してもらうと、こりゃうまい!ってみんな驚いてくれたんですよ」と民子さん。地道な取組みの甲斐もあり、今では毎日1,500個以上を販売。栄養も満点で学校給食にも採用される安曇野の新名物として愛されています。

鮮度が命!「円揚げ」ができるまで

  1. 鮮度が命「円揚げ」ができるまで背開き・血合いを取る池からあげたニジマスはすぐに専用機で背開きし、ひとつひとつ手作業で血合いを取ります。内臓を出してきれいに水洗いすることも臭みのない円揚げに仕上げる要因なのだそう。
  2. 鮮度が命「円揚げ」ができるまで一度揚げたら冷凍へ下処理が終わったら水気をとり、粉をつけて、カタチが揃うよう網に並べ160℃の油で約5分間揚げます。揚がったら完成と思いきや一旦冷凍庫へ。ここで余計な水分を飛ばします。
  3. 鮮度が命「円揚げ」ができるまで二度揚げして味付け凍った円揚げを再度油へ入れて二度揚げ。これが骨までサクサクした食感に仕上がる理由。仕上げに醤油ベースのオリジナルのタレで味付けして完成。地元スーパーに出荷されます。

高原正雄さん・民子さん辰巳(安曇野市)
代表取締役 高原正雄さん・取締役 民子さん

水産学校を卒業し、3代目として18歳から家業を継ぐ正雄さんと、お惣菜製造をメインに担当する民子さんご夫婦。息の合った二人三脚で会社を切り盛りしています。

海なし県 信州で出会う、川魚の世界

川魚の枠を超えた絶品「ますのうの花漬」
命を育む木曽の水系が魚の持つおいしさを高める

昭和4年頃、日本で最初に民間としてマス類の養殖業をはじめたといわれるのが木曽の田澤さんです。木曽での養殖は山の河川水を利用するのが主流で、天候にあわせた対応は必須。

「大雨のときは夜中でも池の様子を見に行ったり、源流に溜まった泥をかいたりするんです。自然や生きもの相手なので苦労は多いけれど、その分魚の味は違ってくる。どこにも負けない自信がありますね」と三代目の昌樹さん。

そんな田澤養鱒場を全国に知らしめたのがオリジナルの「ますのうの花漬」。実は、初代の法要に出す料理として昌樹さんの母の儀子さんが創作して振る舞ったところ、すこぶる評判が良く商品化。のちに幕張メッセで開催された全国物産展で大賞を受賞し、百貨店のバイヤーも認める逸品となりました。

海なし県 信州で出会う、川魚の世界

「木曽は森林保全地域にも指定されていて、本当に水が良い。この地のニジマスが持つおいしさをもっと伝えたいんです」と家族みんなで口を揃えます。

「ますのうの花漬」ができるまで

  1. 「ますのうの花漬」ができるまでおろして切り身に鮮度がよく大ぶりのニジマスを3枚におろして骨を取り、切り身に。かつては小さなニジマスを使っていたが、作業に時間がかかるため、大きなニジマスに変更したのだそうです。
  2. 「ますのうの花漬」ができるまで酢に漬けて一晩置く切り身の下ごしらえが終わったら、まず塩につけて水気を切ることで身を締め、その後、酢につけて一晩寝かせます。着色料や保存料などは一切使わず、素材の味を活かします。
  3. 「ますのうの花漬」ができるまでうの花とあわせる木曽福島の豆腐屋さんから仕入れる“おから”に酢をベースとした調味料で味付けし、切り身とあわせて完成。食卓のおかずはもちろん、酒の肴やちらし寿司にも最適です。

田澤昌樹さん田澤養鱒場(大桑村)
田澤昌樹さん

都内で食の仕事に携わることで家業への関心が高まり、15年程前から三代目として養殖業の道へ。今後は信州サーモンを使った新商品の開発にもチャレンジし、川魚の魅力を伝えていきたいと語ります。

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