情熱が咲かせる 美しい信州の花2018.02.20
大切な時を華やかに演出し、日々の生活に明るさと癒しをもたらしてくれる花。昼夜の寒暖差によって花の色付きが鮮やかになる信州は、全国有数の花の生産地です。
そして今、生産者や育種家の努力と技術力によりさまざまな色やカタチが生み出され、創意と工夫で日持ちや丈夫さなどの改良も進んでいます。今回、その中でも国内外から注目を集めるラナンキュラス、アルストロメリア、トルコギキョウの生産に情熱を捧げる信州のトップランナー達を訪ねました。
信州という理想郷で育つ多彩な色とカタチの花
世界を魅了する冬の宝石、大輪のラナンキュラス
冬から春にかけて出荷される信州を代表する切り花が、地中海地方を原産地とするラナンキュラス。バラに似た幾重にもなる花弁を持ち、色も豊富でブライダルブーケ用にも人気の上品な花です。
この花の魅力と可能性をいち早く感じ取り、独自の栽培技術で大輪に育て上げることに成功したのがフラワー・スピリット。その大きさは、なんと直径18.5cmに達するものも。自主的にサイズを6等級に分けるなどブランド価値の向上にも取組むこの花のガリバー的存在です。
「ラナンは寒くて湿気の少ないところを好むんです。だから信州の環境は、まさに理想的。あと、じっくり育てることも大切なポイントかな。急いで大きくすると花持ちが悪くなるからね」と語る信太郎社長。オランダで10年に一度開催される国際園芸博覧会「フロリアード2012」においても部門最高賞を受賞し、いま世界から最も注目を集める花のひとつです。
フラワー・スピリット(松本市)
代表取締役上條信太郎さん(右)・せい子さん(中)・智之さん(左)
平成23年に松本市を中心とする花の生産者で設立し、現在では28戸に。オリジナル品種も40種ほど開発し、近年は海外への切花輸出も積極的に行う花業界の先駆者的存在。
さまざまな挑戦と努力が通年出荷と長距離輸送を実現
「未来への憧れ」が育む、信州が誇るアルストロメリア
チリを中心とする南米を原産地としオランダなどで交配選抜が進められたアルストロメリア。多彩な色と異国情緒ある姿が特徴でアレンジメントにも人気の花です。日本初の本格栽培地となったのが伊那市。昭和53年に稲作からの転換を考える農家とオランダの育種家との出会いがきっかけでした。「冬場の日照や夏場の冷涼さなどが原産地と似ていて、育種家がここなら良い花が育つと考えたそうです」と織田さん。雨対策にハウスをつくり寒さ対策に暖房をつけるなどの試行錯誤の末、見事に咲いた花は当時1本3,000円の値がつく高評価を得ます。
年間出荷が可能になり全国からの受注が増えて課題となったのが輸送方法。「遠くに出すと、並ぶ時にはしんなりしてしまう。持ちも悪くなるしね」と酒井さん。そこで専用の湿式縦箱を開発し、2週間以上もの日持ちを実現しました。最近では斑の無い新品種も登場するなど、さらなる進化を続けています。
JA上伊那(伊那市)営農部 織田和洋さん(左)
園芸販売課で花きを担当。「産地フェア」と題して生産者とともに花屋で販売するイベントも実施。
アルストロメリア専門部専門部長 酒井弘道さん(右)
日本一の産地として責任と誇りを持ち、部会員内で毎年10~15種の新品種にも挑戦中。
無数の掛け合わせから生まれる、世界をリードするコサージュシリーズ
育種家の技術で進化を遂げた八重咲きのトルコギキョウ
アメリカを原産地とするトルコギキョウ。現在一大産地となっている千曲市での栽培が始まった当初は紫色の一重咲きのみという今では想像できないシンプルさでしたが、カラーバリエーションを増やし、豪華な八重咲きやフリンジなどを実現させたのが中曽根さんです。「掛け合わせで新しい色やカタチを生み出す品種開発は、とても手間と年月がかかる作業。昨年も200くらい掛け合わせたけど、成功したのは4つだけでしたからね。でも、予想外のものが誕生する面白さもあるんです」と語ります。
進化したトルコギキョウは、人気が爆発、一躍メジャー品種へと変貌しました。「今取り組んでいるのは、花屋さんからの要望が強い中間色やトーンを落としたカラー。淡いブルーなど、他の花にもあまりない色を開発できれば、ディスプレイ自体が変わっていく。そのシーンをイメージしながら新品種を考えるのが楽しいんです」とさらなる進化を感じさせてくれます。
ナカソネリシアンサス(千曲市)
代表取締役 中曽根健さん
全国でも稀少なトルコギキョウ育種家のひとり。国内に約170名の会員を持つ「コサージュ会」を設立し、10年以上を費やし開発したトルコギキョウのハイブランド品種「コサージュ」を展開している。
銀座NAGANOでラナンキュラスとアルストロメリアを特別販売!
2月23日から3月16日までの毎週金曜日、今回紹介しているフラワー・スピリットの「ラナンキュラス」とJA上伊那の「アルストロメリア」を入荷します。
信州を代表する花で春の訪れを実感してみませんか。