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ライフスタイル・オブ・信州ライフスタイル・オブ・信州

ものづくりの技が生んだ信州の暮らしに寄り添う雑貨たち

雑貨信州が誇る伝統工芸品と精密加工品。一見対極にあるように見えますが、ともに山々に囲まれた信州の環境、勤勉と言われる県民性が生み出したものといえます。でも、なかなか自分のライフスタイルからは遠い存在、そのように思っている人も少なくないのでは。実は今、確かな技が生んだ品々が姿を変えて、私たちの生活の中で輝きを放ち始めています。

信州ブランドアワード2018 地域ブランド部門賞受賞
上田紬
上田紬

蚕種の中心地で誕生した日本三大紬のひとつ

かつては「蚕都(さんと)」とよばれたほど蚕種(蚕の卵)製造業が盛んだった上田市。この地で脈々と承継されてきたのが、日本三大紬のひとつとも言われる「上田紬」です。そもそもは養蚕農家が商品にならないくず繭を自家用に利用したのが始まり。くず繭を広げて真綿にし、紡ぎ出した紬糸で織ったものが紬織物です。

「上田を流れる千曲川は昔から氾濫に見舞われてきましたが、蚕のエサである桑は根を深く張るので流されず、また氾濫で肥沃な土壌が上流から運ばれるので桑がよく育ち、蚕も大きくなりました。さらに強い川風で桑の大敵である害虫が払い落とされるので、上田は日本の蚕種業の中心地になったんです。原材料に恵まれたっぷりしっかり織り込むので、上田紬は丈夫だと言われます」
こう話すのが、長野県で最初に蚕種の製造を始めた会社の織物部門として創業した藤本つむぎ工房の佐藤元政さん。縦縞を得意とする「上田紬」は江戸時代には井原西鶴の『日本永代蔵』にも粋な着物として登場したそうで、色柄や模様に決まりがなく価格も比較的手頃なことから、いろいろなものを着こなしたい着物好きが行き着くところだと言われています。

機織り

とはいえ、今は着物を着る人自体が減っている時代。現代のライフスタイルに沿ったものを考え、藤本つむぎ工房ではトートバッグやポーチ、ケース、ブックカバーなど、個性的な小物を制作。また、各工房では海外ブランドへの素材提供や、りんご染めなど従来とは違う染色などの取組も見られます。「産地全体が海外展開までを見据え、評価される製品を生み出していく」そんなビジョンが上田紬の進化をさらに加速させています。

佐藤さん

「上田は昔から新しいものを取り入れる文化が根付いており、上田紬も流行やお客様の要望に応じて作ってきました」と話す佐藤さん。色使いにもトレンドを取り入れるなど、古典柄がないことを逆手にとった自由度の高さを生かしています。また、上田紬織物協同組合では上田市にキャンパスがある信州大学繊維学部と共同で養蚕に取り組み、地元産の繭を作るなど幅広い活動を展開しています。

紬糸はこうして誕生しました

※昔はくず繭を原料にしていましたが、現在の原料は普通の繭です。

[上田紬織物協同組合(藤本つむぎ工房内)]
TEL 0268-22-0900

INFORMATION

銀座NAGANOでも小物入れなどを販売予定です。お楽しみに!


信州ブランドアワード2018 地域ブランド部門 入選
竹細工イメージ
戸隠竹細工

戸隠地域とともにある暮らしが育んだ伝統

「この地域に自生する根曲がり竹(チシマザサ)を使った戸隠竹細工は、繊維がしなやかで丈夫。輸入品の竹細工は使っていると棘が立ってきてしまいますが、戸隠竹細工は使い込むと飴色のような色合いになって手に馴染み、頬ずりができるほど滑らかになります。売っているものは完成品ではなく、使うことで熟成されるのです」と戸隠竹細工の魅力を伝えるのは、生産組合長の井上栄一さん。真骨頂といえるのが名物のそばを盛る“そばざる”で、若竹、2年もの、3年ものを使い分けながら緻密に編むことで、堅牢で完成度の高い一品になります。この熟練の技術で作られるのは、自然の中や台所などで使うさまざまな道具たち。かつては、箕(み)や魚籠(びく)などが中心でしたが、近頃は弁当箱やバッグなど時代に合ったものを井上さんは手がけています。

そんな日用品の中で、大きな注目を集めたアイテムがコーヒードリッパー。伝統の技術が凝縮された上質な佇まいで、TV番組で紹介されたこともあり、今では予約もできないほどの人気です。
一方で、後継者不足という切実な問題にも直面。「たとえ技術を残せても、この地域にその文化が残らないと意味がありません。暮らしに根付く戸隠竹細工を通じ、戸隠神社や山々、人々の生活など地域全体の文化を次の世代へと受け継いでいくことがこれからの目指す姿です」。そんな思いが竹を編む井上さんの手に込められます。

竹細工イメージ

「竹細工の面白さは、形や大きさなどお客様の要望に柔軟に応えられるところ。また、自分で山に入って材料の竹を切り出し作っていく自己完結型であることも魅力です」と井上さん。代々竹細工を作る家で育ち、祖父や父の姿を見て「竹を切って割り続け、繊維のように細くなったものが全く違う立体の形になって新たな命が吹き込まれる手の動きがマジックのようだと感じました」と当時を振り返ります。

井上さん

ナタとハサミ、切出し小刀などを使って作る竹細工。道具は鍛冶屋によるオーダーメイドで、竹を割る材料作りが最も時間も技術も要するのだとか。「作るものによって、節があって硬さが異なる竹の厚さや幅を揃えていきます。材料がいいとよい品物ができます」と井上さん。指先の感覚で切り出すため、昔の人は停電でも竹割りができたとか。とはいえ熟練した職人でもなかなか納得のいくものができないそう。

こんな使い方はいかが?魚籠を花器に、パン皿のように、スタンドライトに

[戸隠中社竹細工生産組合]
TEL 026-254-2391

INFORMATION

コーヒードリッパー

山登りが趣味の井上さんが山頂でおいしいコーヒーを飲むために自分の技術を生かそうと生まれたコーヒードリッパー。なかなか手に入らない商品ですが、12月20日頃から銀座NAGANOで毎月数量限定販売します!


信州ブランドアワード2018 個別ブランド部門賞受賞
万年毛筆、ボールペン
Laurett’s

最先端×伝統、剛×柔、対極が融合したスタイリッシュな文具

時計や光学機器など精密機械工業が盛んな諏訪地域で高度な切削技術を擁し、カメラやオーディオ、自動車などのさまざまな外観部品を製造している丸安精機製作所。そんな同社が生み出したのが、スタイリッシュな筆ペン「Laurett’s(ローレッツ)MLK万年毛筆」です。まず目を引くのが、アルミ表面をギザギザの形状に切削するローレット加工の技術を生かした、美しく精密なデザイン。実際に触れると心地よい手触りがやみつきになりそう。キャップを外せば、墨汁の老舗メーカー・開明とのコラボで作られた筆先がペンの持ち手を導くように滑ります。

社内

誕生のきっかけは「自社の誇る技術を生かしたオリジナル商品を創りたい」との思いと、工場見学に訪れたデザイナーから出た「文具を作ってはどうか」というアイデアとの出合い。「金属加工の近代的なソリッドさと毛筆の古風な柔らかさの融合」を目指して試行錯誤が繰り返され、完成までに約2年の歳月が費やされました。
製品の完成度と今までにない斬新性が評価され、今年6月に栄えある「日本文具大賞(デザイン部門)」の優秀賞を受賞。「一般でも知られる大きな賞だったので本当に驚きましたし、世の中に認められてうれしかったですね」と取締役の長峰偉紘さんは振り返ります。さらに注目を集め、この夏にはボールペンシリーズも発売となりました。
「面白いと思うことにチャレンジできる頭の柔らかい会社となって、諏訪地域全体のものづくり文化をもっと盛り上げたい」と意気込む長峰さん。創業51年を迎える丸安精機製作所の新たな挑戦が楽しみです。

長峰さん

超美麗切削加工で削り出した「Laurett’s」。万年毛筆、ボールペン各3種類を発売中。両端は渦巻きのスピン加工により側面とは異なる装飾に。「こだわったのは、外観のシンプルな美しさと、開けると筆ペンというギャップの面白さ。転がり防止や携帯性の面でクリップを付けるか悩みましたが、最終的には見た目の意外性やデザインを大切にしました。身の回りのものにこだわっている人に使ってもらいたいですね」と長峰さん。

ボールペン内部のパーツ

ボールペンは内部のパーツまで全て自社で削り出しており、ボディとキャップがアルミなのに対してペン先は真鍮を用いることで前重心になり、安定感がアップ。ボールペン芯は実際に使って最も書き心地が滑らかなものを採用していますが、ユーザー好みのものに交換可能。今後は筆ペンのボディの長さを伸ばすエクステンションバーの開発も考えているそう。

[株式会社丸安精機製作所 Laurett’s事業部]
TEL 0266-52-3756

INFORMATION

銀座伊東屋、銀座蔦屋書店(GINZA SIX 6F)で取扱中。ぜひ本物の美しさを体感してみてください。


信州ブランドアワードロゴマーク
信州ブランドアワード https://www.ndpa.jp/ndpa/sba/

産学官が協働して長野県の優れたブランドを選考・周知し地域の魅力を高め、県内全体のブランド価値を高めるための取組。これまでに15回開催され、八幡屋礒五郎、地獄谷野猿公園などが大賞を受賞しています。

この記事は2018年12月時点の情報です。
取扱商品等は変更になっている場合がございますので、ご了承ください。

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