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ジビエを味わうなら信州!大自然が育んだ味を、もっと身近に。

gibier_imgフランス語で狩猟鳥獣の肉のことをいう「ジビエ」。
狩猟が解禁される冬は、ジビエ料理が本格的に楽しめる季節です。
ハンターでジビエの生産者である信州ナチュラルフーズの青木和夫さんと、1級フードアナリストの中島麻希さんに狩猟のこと、ジビエのことをお話しいただきました。

お諏訪さまの「鹿食免(かじきめん)」
青木 その昔、仏教の伝来により殺生を忌み嫌う時代、狩猟によってシカ肉などを食べることはタブーとされていましたが、狩猟の神様でもある諏訪大社には「諏訪の勘文(かんぶん)」というものがあり、慈悲と殺生は両立するという説がありました。諏訪大社では狩猟の免罪符「鹿食き免」を発行して、これを授かった人は生きるために狩猟をしてシカ肉などを食べることが許されました。こうした背景があって諏訪地域では、古くからジビエが伝統食として根付いていたんですよ。

諏訪大社の鹿食免

諏訪大社の鹿食免

中島 南信州では「ふとんを質に入れてもシカ肉を食え」と言われていたそうです。この言葉からジビエは信州の厳しい冬を乗り越えるための貴重な栄養源だったことも伺い知れますね。
青木 小さい頃、父は冬になると私を炭焼きに山へ連れていきました。その合間に空気銃で狩猟をして私と遊んでくれました。山は遊び場であり、学び場でした。私は「カントリーレストラン匠亭」を開業させた後で狩猟免許を取得し、シカ肉を使ったステーキやカレーを提供したのですが、これを目当てに県外から多くの方に訪れていただいたもので、平成3年からメニューをジビエ料理に特化させまして、ジビエの加工品の製造も始めました。
中島 私も、昨年長野県がハンター養成学校を開校したのがきっかけで、わなの免許を取得したんです。今後は銃の免許も取得したいと思っています。
青木 狩猟を生業として行っている立場の人間として、捕獲したものは余すことなく食べてあげることで、人間と同化して成仏できる。そうすることが命を大切にすることに繋がるという気持ちで狩猟をしています。そのため、私は毎朝鹿食免のお札にお参りをしてから、山に出かけています。
中島 それこそがお諏訪さまの教えですよね。命をいただくわけですから、最後まで美味しく味わうことが大切だと思います。

takumitei_sika_steak味わい深いジビエの世界
青木 ひと昔前までは、多くの人がジビエに対してネガティブな先入観を持っていたのですが、最近では、その香りや歯ごたえこそがジビエの個性だと理解する方も増えてきました。
中島 牛肉や豚肉にもそれぞれの香りがありますよね。それに海外に行くと、ステーキは噛みごたえのあるものも多いですし。日本のやわらかくサシが入ったような肉に対して、外国の方が驚かれる様子をよく目にします。現代の日本では、「美味しい肉=やわらかい」というのが風潮ですよね。
青木 「匠亭」で出している「鹿ロース肉のカツステーキ」は2週間ほど寝かせた熟成肉を使っています。ナイフがスッと入るほどやわらかい。だから本当に驚かれます。ジビエって美味しいんだ!と。
中島 本当にやわらかいですね。血抜きなどの処理もきっと工夫されているからだと思います。部位によっても、繊細だったりやわらかかったり芳醇だったりとさまざまなんですね。いろいろ食べ比べるとより深くジビエの滋味が堪能できます。

ジビエを女性に食べてほしい理由
青木 ジビエと聞くと敷居が高いと感じる人もいるかもしれませんが、他の肉と同様で、ロース肉など良い部位は焼くなどシンプルに、ゼラチン質の豊富なスネ肉は煮込むなど、部位によっても調理法はさまざまです。ふだん作るカレーや肉じゃが、ハンバーグなどで使えば、ご家庭の食卓で簡単にジビエが楽しめますよ。
中島 シカ肉は牛肉や豚肉に比べてたんぱく質が多くて脂質が少なく、カロリーも少ないんです。また、鉄分は牛肉の2倍近く、豚肉、鶏肉の5倍以上も含まれています。さらにカルシウムも牛肉、豚肉の2倍以上含まれていているんですよ。ミネラルが不足しがちな女性に美容と健康のためにもぜひ取り入れてほしい食材です。
青木 最後にもうひとつ……。信州ジビエのおいしさや安全性を多くの方に知っていただき、ジビエを味わいに多くの方に信州にお越しいただけるよう信州ジビエをもっと発信していこうと思います。

信州ジビエのホームページではジビエの取扱い店やレシピなどの情報を公開中。 http://www.shinshu-gibier.net

gibier_taizan信州ナチュラルフーズ代表信州ジビエ研究会獣肉処理部門理事青木 和夫さん(左)
平成元年に「カントリーレストラン匠亭」をオープンし、平成3年からジビエ料理を提供。平成19年にはジビエのお土産品を作ろうと鹿・猪・熊などの肉を解体・処理する工場「信州ナチュラルフーズ」も開業。長野県内の信州ジビエに係る事業者、研究機関、行政などの情報交換と連携のため、平成24年に設立された信州ジビエ研究会の理事として、信州ジビエのブランド化を目指して活動中。

1級フードアナリスト(社)日本フードアナリスト協会認定講師中島 麻希さん(右)
信州初の1級フードアナリストとして食に関するさまざまな講演・執筆活動をはじめ、飲食店のコンサルティングからレシピ開発など活動は多岐に渡る。今後はジビエがもっと身近になるよう講演やイベントの企画も検討中。※フードアナリストとは、食物や食文化、トレンドなどあらゆる角度から 食に関する幅広い知識を持った、食の情報の専門家

信州産シカ肉認証制度について
「信州ジビエ衛生管理ガイドライン・衛生マニュアル」に沿った適切な信州産シカ肉の処理・加工・販売を実施している施設を、長野県と信州ジビエ研究会が認証する制度です。認証施設で処理する個体ごとに、個体認証番号を付し、認証番号ごとにその個体の捕獲や処理に関するデータを公表しています。このデータは、認証製品に貼付された認証シールのQRコードから長野県のホームページで調べることができます。

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