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みんなで考えよう!地域のこと、環境のこと、未来のこと NAGANO発、SDGs

みんなで考えよう!地域のこと、環境のこと、未来のこと

経済分野を主要議題として毎年開催される国際会議「G20サミット」。今年は日本が議長国となり、37の国や機関が参加する予定です。6月15・16日には、軽井沢町で「持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」が開催され、エネルギー転換やプラスチックゴミによる海洋汚染問題など地球環境が議題に。そこで今回は、長野県でSDGs※の理念に沿った活動に取り組んでいる事業者の先進事例をご紹介します。

※Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)とは…持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成される国際目標。長野県は、SDGs達成に向けて優れた取り組みを提案する「SDGs未来都市」として選定されており、県の総合5か年計画にもSDGsの理念を組み込み、誰一人取り残さない「確かな暮らしが営まれる美しい信州」の実現を目指しています。

さんさんファーム (松川町)
無添加のソーセージやハム、ベーコン、ジャーキー

地域活性化と差別化を目指し、資源循環型農業を実践

果樹栽培100年以上の歴史を誇り、県内屈指の「くだものの里」として知られる松川町。昔から独自の販路をもつ農家が多く、1975年に中央自動車道松川ICが開通してからは県外からも多くの人々が訪れるようになり、果物狩りなど観光農園なども含めた独自の農業経営が行われてきました。
そんな松川町で遊休農地を活用し、農業と養豚の循環型有畜複合農業に取り組んでいるのが「さんさんファーム」です。減農薬で果樹や米を栽培し、出荷できない規格外品や虫食いなどの未利用資源は養豚のエサに。そして、堆肥を田畑の肥料にして、豚肉は無添加のソーセージやハム、ベーコンなどに、果実は生食用だけでなくジュースやジャムなどに加工して販売しています。

設立は1998年。消防団などの活動を通じ仲が深まった4軒の果樹農家の後継者たちが、「通年販売できる製品を作ってお客様に忘れられない農園となり、松川町にもっと多くの人が訪れるようにしたい」との思いを共有したのがはじまりでした。代表の宮下彰さんは祖父の代から果樹栽培のかたわら、小規模の養豚も営んでいたことから、養豚と豚肉加工に取り組むことに。仲間のひとりで兼業農家だった原 実さんは脱サラし、加工肉の勉強のために当時から無添加でソーセージを作っていた岐阜県のハム工房で住み込みで製造方法を習得しました。2年目には全寮制の食肉学校の加工コースに進学し、豚の解体から本格的に学びました。
果樹栽培は宮下さんと妻のゆかりさんが、畜産は原さんが主に担当。地域で増え続ける遊休農地を少しずつ借りて拡大し、現在はIターンの若者を含む約10名のスタッフとともに、およそ10haの農地でりんごやなし、もも、市田柿などを栽培しています。

化学調味料、保存料、着色料、発色剤を一切使用せず、新鮮な肉をりんごのチップでスモークした無添加のソーセージやハム、ベーコン、ジャーキーは銀座NAGANOでも販売中。塩や砂糖にもこだわり、副材料もできる限り地元のものを使用。ソーセージは繊維が多い肩肉を使うことで結着性を高めています。また、近年深刻化している野生鳥獣による農作物被害や環境問題に対応するため鹿肉も取り扱っています。

宮下さん(右)と原さん(左)

家業の農業を引き継いだ約10年目に「さんさんファーム」を立ち上げた宮下さん(右)と、皮革製造業界で働き、脱サラした原さん(左)。原さんは「素材ではなく消費者に届ける製品を作りたい」という思いもあったそう。

ひめこなつ

農地は地域の30数カ所に点在しており、昨年、銀座NAGANOでも人気だった早生品種の小さなもも「ひめこなつ」も栽培。果肉は黄色で糖度12度を超える甘さも特徴です。
※6/20頃 銀座NAGANOに入荷予定

エコ&リユース発想でのおもいやりある環境づくり

施設の有効活用も「さんさんファーム」の特徴です。育成豚舎はJAの種豚場を借り受けた開放的な空間。飼っているのは、信州では希少な純粋バークシャー種の黒豚です。改良品種に比べ野生味を残し、産子数が少なく発育も遅いため経済効率は悪い反面、肉質が柔らかく弾力があり、脂肪の甘くさっぱりした味わいは格別です。
また、アニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮した飼養管理を以前から行っているのも特徴。豚の個体識別のための耳標(番号タグ)を付けておらず、密飼いなどのストレス環境下で発生する「尻尾かじり」を防ぐために子豚のうちに行われる尻尾やキバの切断も、快適性に富んだ「さんさんファーム」では行いません。
加工を行う活動拠点「森の家」も、旧生田村役場を移築し改装した建物。併設のBBQ施設では、自社飼育の豚肉やソーセージ、ジュース、シードルといった製品を楽しめます。有機資源を循環させながら農畜産物を生産し、さらに6次産業化で収益の向上を図るという地力と持続性を高める理想的な農業体系が営まれています。

豚舎

家畜を快適な環境で飼養するアニマルウェルフェアに配慮した豚舎。もみがらが敷き詰められ、糞尿などの臭気はほとんどありません。そして、このもみがらは糞尿と混ざって良質な堆肥となります。「さんさんファーム」では、年間500頭の黒豚を出荷。写真は80~100kgほどの黒豚で、約120kgの出荷適正体重になると出荷されます。

森の家

国産の木材を使って2015年に完成した「森の家」では、食肉の加工のほかに自社製品の販売も。BBQ施設は周囲の林の間伐材を使って手作りしたものです。また「さんさんファーム」では、果物狩りなどと合わせて楽しめるソーセージ作りや、自社栽培のそば粉を使ったガレット作り体験会も実施し、地域の観光を盛り上げています。

[さんさんファーム]
長野県下伊那郡松川町大島2995 TEL 0265-36-6608

ほかにもあります!

銀座NAGANOで出合える循環型農場の商品

永井農場(東御市)

浅間山麓で稲作と酪農の複合経営による循環型農業を実践

永井農場画像

減農薬栽培の稲作で出た稲藁を乳牛のエサや牛舎の敷き藁に使用。その藁を牛糞やもみがらとともに約1年間保管し、完熟堆肥として稲作の肥料にしています。こうして栽培されたもち米や玄米を原料に使ったあげもちと、ノンホモ牛乳を使って本来の味を生かしたヨーグルトドリンクは銀座NAGANOでも販売中。あげもちは手作りならではの素朴な味を楽しめ、ヨーグルトは国産ビート糖を加えた、ほんのり甘くやさしい味わい。いずれも人工調味料・保存料不使用です。
[永井農場]
長野県東御市和8513-1 TEL 0268-64-0588

  • あげもち画像あげもち
    (塩・砂糖醤油・玄米)

    各410円
  • ヨーグルトドリンク画像ヨーグルトドリンク
    200ml 216円
牧舎みねむら(東御市)

一貫飼育の自家産牛にこだわり、良質な牛糞堆肥は地域で循環

牧舎みねむら画像

自然豊かな浅間山麓で健康を第一に考え、黒毛和牛を人工授精から出荷まで完全一貫飼育。牛糞はもみがらと混ぜて発酵させ、ふかふかな堆肥とし、地元稲作農家の稲藁と交換して牛の飼料にして循環型農業に取り組んでいます。堆肥は専門機関で成分分析も。A4ランク以上の牛肉のソトモモを使って低添加物で製造したビーフジャーキーは赤身の旨さと口どけのよい脂肪、ブラックペッパーのハーモニーが絶品で、コンビーフはわさびを付けるとアクセントに。
[牧舎みねむら]
長野県東御市新張1265-354 TEL 0268-63-7415

  • ビーフジャーキー画像ビーフジャーキー
    864円
  • コンビーフ画像コンビーフ
    648円

伊那食品工業㈱(伊那市)
可食性フィルムイメージ

寒天から起こすイノベーション!
未来を拓く脱プラスチックへの挑戦

世界的な問題になっているプラスチックゴミによる環境汚染。身近で便利なプラスチックの削減に先進的に取り組んできたのが、日本の伝統食品・寒天の可能性を常に追求し続けてきた業界のトップメーカー、「かんてんぱぱ」で知られる伊那食品工業株式会社です。

さまざまな寒天製品の中でも画期的な開発品のひとつが、食べられる透明な「可食性フィルム」。オブラートと違って水では溶けずにお湯で溶け、機械にかけられる強度もあることが特徴で、1991年にプラスチックをなんとか削減できないかとの思いから開発されました。しかし、開発当時の国内はまだ環境保全への意識が低く、自社製品の寒天スープの調味料を包むぐらいの利用方法しかなく、他企業からの引き合いはほとんどなかったそう。ところが、時代の変化とともに注目されるようになり、2009年にはコンビニエンスストアで販売する麺類の麺とスープの間のフィルムに用いられました。手も汚さずゴミも削減できることから用途も広がり、現在では国内で年間約100tの脱プラに貢献。最近ではシール強度も高めて油などの液体の包装もできるようになり、化粧品や化成品、農業分野の開発が進められています。

また、廃棄物の再資源化の取り組みもいち早くスタート。寒天製造で出る大量の残渣(寒天カス)には寒天の原料である海藻由来のミネラル分が豊富に含まれることから、グループ会社「(有)ぱぱな農園」では完全発酵し、堆肥化させた土壌改良剤を約30年前から製造販売しています。こうした取り組みにより、1996年にはリサイクル推進功労者として農林水産大臣賞を受賞。土壌改良材「養土藻」を使って、遊休農地で栽培された野菜や米は、伊那食品工業の直営レストランで使用・販売されています。
開発型研究企業として、環境負荷を減らしながら付加価値の高い製品を生み出し続けている伊那食品工業。長野県からイノベーションによるサステナブル(持続可能)な社会づくりに貢献しています。

可食性フィルムイメージ

パスタやそうめんの帯を可食性フィルムに。また、近年プラスチック製ストローが問題化していることから、紙ストローに比べて耐水性があるストローも開発中。印字もできるため、改元に合わせて「令和」の文字を印刷した可食性フィルムも作るなどさまざまな試みをしています。フィルムを水に浸けるとゲル状のシートになるフェイスパックも研究中。

小松さん(左)、落さん(中)、石田さん(右)

「ぱぱな農園」も担当する経理部部長・小松浩明さん(左)、研究開発部課長・落俊行さん(中)、経営企画室・石田友香さん(右)。ユニークな寒天商品は国際的にも評価されており、5月にはフランスで開催された国際産業フォーラムで落さんがプレゼンを行いました。今後は海外展開も視野に入れているそう。

養土藻、養土藻米

「ぱぱな農園」では大型設備を導入し、寒天残渣を撹拌・乾燥・発酵させて「養土藻」を製造。排水処理後の高ミネラルの残渣を加え、高品質の土壌改良剤にしています。さらに昨年は養土藻米の栽培も。食味値80点以上の高評価を得て通信販売では即完売するほど好評を博しました。

[伊那食品工業株式会社]
長野県伊那市西春近5074 TEL 0265-78-1121

この記事は2019年6月時点の情報です。
取扱商品等は変更になっている場合がございますので、ご了承ください。

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