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大豆の究極の姿が長野県にあった!? 今、「凍り豆腐」が熱い!

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寒さの厳しい冬の長野県では、各地で極寒の気候風土を生かした独特の食文化が育まれました。特に氷点下10度を下回るほど冷え込む日が多く、湿度が低くなる盆地や山間部では、古くから冷凍と乾燥を繰り返すまさに「天然のフリーズドライ製法」によってさまざまな加工食品が作られ、保存食として重宝されてきました。その代表格といえるのが、凍り豆腐。大豆の優れた栄養価と旨味がギュッと詰まった伝統食材は、良質なタンパク質とミネラルを豊富に含む健康食品として再び熱い注目を集めています。

旨味、栄養、保存性を兼ね備えた長野県の誇る伝統食

凍り豆腐

現代人に必要とされるレジスタントタンパクを豊富に含む食材として再度注目を集める「凍り豆腐」。薄く切った木綿豆腐を冷凍し乾燥させた伝統食で、「こうや(高野)豆腐」「凍み豆腐」とも呼ばれます。

長野県内では、佐久、諏訪、飯田地方を中心に生産が盛んに。佐久地方では、なんと400年以上前の戦国時代に武田信玄が好んで兵糧にしたことから作られるようになったと伝えられ、その製法は今とほぼ変わらないといいます。また、八ヶ岳の麓、茅野市の蓼科中央高原近くでは、大正時代に地元の男性が和歌山県の高野山で高野豆腐の製法を学び、伝えたことがきっかけで、作られるようになったようです。
長期保存ができることから、寒冷地にある農家の冬の副業となり、明治時代に入ると社会情勢的にも需要が増え、製造戸数も増加しましたが、ほとんどが家内制手工業によるものでした。そんな中、昭和4(1929)年に現在の「みすずコーポレーション」が、戻した時に柔らかく食感のよい「膨軟加工法」を発明。この製法が県内に普及し、メーカー各社も独自の研究開発を重ね、長野県が全国随一の生産地になっていったのです。

千年豆腐(小林豆腐工房)のマイナス10℃の気温で水分が凍結した状態の木綿豆腐。ここから自然乾燥と凍結を繰り返され、水分が抜かれて凍り豆腐となっていきます。

生木綿豆腐のカット工程

みすずコーポレーションでの生木綿豆腐のカット工程。製品づくりの根幹となる豆乳の製造や豆腐の成形等の重要工程の随所に伝統技術が生かされてます。

凍り豆腐は、「凍み豆腐」「こうや豆腐」などとも呼ばれますが、戦後は凍豆腐組合により「凍(こおり)豆腐」が統一呼称とされ、現在はJASにより「凍り豆腐」が正式名称とされています。


昔ながらの天然製法でじっくり作る凍り豆腐

小林哲郎さん

「千年豆腐」小林豆腐工房
小林 哲郎さん・千年さん

一年で最も冷え込む1月から2月、茅野市の白井出地区では特産の凍り豆腐作りが最盛期を迎えます。1960年代、同地区には10軒もの豆腐店があり、冬には北海道からも出稼ぎが来るほどの風物詩でしたが、今、昔ながらの手作り豆腐で天然の凍り豆腐を作るのはわずか1軒。「千年(せんねん)豆腐」の屋号を掲げる小林豆腐工房だけです。

「千年豆腐」小林豆腐工房外観

「豆腐が凍みるのは、マイナス5℃以下。晴れた日は、翌朝の放射冷却を見越して、日が沈んでから豆腐を並べて一気に凍らせるんです」と話すのが、豆腐作りを担うご主人の小林哲郎さん。取材当日の朝の気温はマイナス11℃。「今年一番の冷え込みで、最高の凍り豆腐ができましたね」と笑顔を見せます。

作業風景

凍り豆腐用の木綿豆腐の製法は通常と違っていて、豆乳に天然のにがりを加えた後の混ぜ方がポイント。通常の木綿豆腐は丁寧にかき混ぜ、ふわふわとしたおぼろ豆腐にして木枠の型箱で固めますが、凍り豆腐の場合はしっかりとかき混ぜて塊をなくした豆乳にします。こうすることで、より硬く締まった豆腐ができ、凍り豆腐になった時に大豆の力強い味わいを感じさせながらも、なめらかな口当たりが実現するのです。一晩の急速冷凍で豆腐を芯まで凍らせたら、翌日からの作業は妻の千年(ちとし)さんにバトンタッチ。凍った豆腐をワラで数個編み上げて連にしていきます。千年さんはこの古くから伝わる編み方を叔母に教わったそう。こうして作った連豆腐を戸外に吊るし、清冽な空気と昼間の暖かい日差しによる凍結乾燥を2~3週間ほど繰り返したら、天然の凍り豆腐の完成です。例年、この作業を2月10日頃まで行うそうですが、今年は極度の暖冬に見舞われ仕込める日も少なく、キーンと冷える茅野ならではの寒さが待ち遠しいと語ります。

小林哲郎さん・千年さん

「豆腐作りは大豆の量や浸漬の時間、茹でる水加減、豆乳の温度、にがりの量や入れるタイミングなど、やればやるほど悩みが尽きないのが難しさであり面白さです」と小林さん。豆腐作りを始めたのは12年前で、調理師だった小林さんが食の安全にこだわり、地域に伝わる食文化を残そうと、かつて豆腐屋を営んでいた千年さんの父から製法を教わって伝統の味を復活させました。

青大豆

「千年豆腐」で使われている大豆は、松本産の「ナカセンナリ」と、地元で40年間自家採種され、有志が生産している大変希少な畦豆の青大豆「あおばた」。美しい緑色で甘みが強い一方、栽培が難しく収量が少ないのですが、小林さんは地産地消の観点から「あおばた」を使った豆腐作りに励んでいます。ほかに「あやみどり」という塩尻産の青大豆も使用しています。

「千年豆腐」の天然凍り豆腐ができるまで
作業風景

1. 浸漬・磨砕・加熱・絞り

18時間以上水に浸漬して膨潤させた大豆をすりつぶして生呉(なまご)にし、蒸気ボイラーで加熱して豆乳とおからに分離する。


作業風景

2. 凝固

73〜75℃まで冷えた豆腐に天然のにがりを一気に加え、櫂(かい)と呼ばれる木の板で豆乳をしっかりと120回かき混ぜる。


作業風景

3. 型入れ・圧搾・成型

特注の木枠の型箱の中に木綿布を敷き、その中に豆乳を流し込み、蓋をして重石で圧力をかけながら水分を出す。


作業風景

4. 型出し・水さらし・冷凍

豆腐の状態になったら型から出し、地下水にさらしてにがりのえぐみを取る。夕方、切って屋外に並べ、雪に当てず芯まで一気に凍らせる。


作業風景

5. 編み上げ

翌日、凍った豆腐を3本のワラで編み上げる。手際のよさはまさに熟練の技だが、昔は各家庭の子どもの仕事だったとか。


作業風景

6. 凍結乾燥

軒下などに干して自然凍結と溶解、乾燥を繰り返し、2~3週間で完成。白井出地区ではかつて行商も盛んで飯田市や甲府市まで売り歩いたそう。

[「千年豆腐」小林豆腐工房]
茅野市湖東260-1 TEL 0266-77-3102
http://sennentofu.jp/


銀座NAGANOにあります 信州の凍り豆腐いろいろ

現在、凍り豆腐(こうや豆腐)は長野県を代表する伝統食のひとつとして、全国の90%以上のシェアを誇っています。メーカーの「こうや豆腐」は一度冷凍した豆腐を低温で20日ほど寝かせて熟成させ、その後乾燥させる製法で作られています。


[ 旭松食品 ]

業界最大手メーカー。「新あさひ豆腐」は、こうや豆腐を柔らかくするために使用していた重曹を炭酸カリウムに切り替えた特許製法で、ふっくらとしたおいしさはそのままに、食塩相当量をほぼ0にする大幅な減塩を実現。「第6回健康寿命をのばそう! アワード」にて「厚生労働省局長優良賞」を受賞しました。使用大豆も国際規格であるグローバルGAP認証やアジアGAP認証のものに順次切り替えています。取引先のパン店では粉豆腐を使ったパンが世界大会の健康パン部門で優勝するなど、用途の可能性も広がっています。

  • 新あさひ粉豆腐

    新あさひ粉豆腐
    324円

  • あさひ粉豆腐

    あさひ豆腐
    1/60サイズ 162円

  • あさひ粉豆腐

    あさひ豆腐
    1/150サイズ 162円


[ 信濃雪 ]

中小企業ならではの強みを生かし、手間ひまかけた商品を開発。国産大豆を細かく粉砕した生呉(なまご)の状態から熱を加える前に豆乳とおからに分離させる凍り豆腐業界唯一の「生搾り製法」を採用。豆乳だけに熱を加えてにがりを打つことで、大豆の皮や胚芽に含まれる苦みや渋みといった雑味が豆乳に入らず、歩留まりは悪いものの、その分、豆乳が濃く大豆の味がしっかりとしたこうや豆腐を実現しています。「連豆腐」は昔ながらの風情を連想させる商品でおみやげとしても人気です。

  • 連豆腐

    連豆腐
    645円

  • 極小こうや豆腐

    極小こうや豆腐
    324円

  • 凍み豆腐さいの目

    凍み豆腐さいの目
    550円


[ 登喜和冷凍食品 ]

中央アルプスの伏流水からなる軟水の井戸水を使用することで、昔から柔らかい食感の凍り豆腐ができると評判。生産量は業界第3位。「信州産大豆こうや豆腐」は大豆の味が濃く、凍り豆腐にしても大豆由来の甘みや香ばしさを残せる長野県産のナカセンナリを100%使用し、もっちりなめらかな食感が特徴です。凍り豆腐作りの技術を活用し、養命酒製造とコラボで開発した熟成豆腐チーズ「醍醐丸」も注目を集めています。

  • 信州産大豆こうや豆腐

    信州産大豆こうや豆腐
    253円


[ みすずコーポレーション ]

昭和初期に発明されたアンモニアを使う「膨軟加工法」は、当時の凍り豆腐の味、品質、生産性などすべての面に革新的な進歩をもたらしました。特許も取得しましたが、業界全体のためにと長野県内メーカーには無償でその製法を公開し、長野県産凍り豆腐が全国に広まっていくきっかけとなりました。その後、重曹を使う製法が誕生し、今では主流となっています。現在も業界の先駆者として、従来の概念にとらわれない用途やレシピの提案と商品開発にも積極的。そのひとつといえるのが、「簡単!粉とうふ」。乾燥野菜や調味料が一緒になっていて、お湯とフライパンだけで調理が可能。銀座NAGANOと通販限定販売のアイテムです。

  • 細ぎりの凍り豆腐

    細ぎりの凍り豆腐
    324円

  • こうや豆腐徳用

    こうや豆腐徳用
    246円

  • 簡単!粉とうふ

    簡単!粉とうふ
    216円

粉豆腐の元祖!?「トーフミール」って?

トーフミール

栄養価が高く、健康食材として積極的に摂取したい凍り豆腐ですが、料理すると煮物や汁物になってしまいがち。そんな中、粉末になっていて、小麦粉やパン粉の代用にもなり、さまざまな料理に使えると人気が高まっているのが粉豆腐。その商品化も「みすずコーポレーション」が最初だったいう説も。そのルーツを聞いてみました。

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「うちに限らず、各メーカーさんは、成型に失敗した商品やカットする際に出た粉も同じように食べられるものなので、近隣の方々に安く分けていたようです。これが、「さまざまな用途に使える」、「簡単に調理できておいしい」、「特に炒り豆腐にするときめ細かい生豆腐のような食感になる」と人気だったことから、昭和40年代に当社ではトーフミールとして商品化しました。最近は全国的に粉豆腐が人気になっていますが、県民の中ではずーっと前から家庭の味として親しまれていたんですよ」

和澤正文さん、竹内巧さん、今井真理子さん

副統括事業部長・和澤正文さん
マーケティング部部長・竹内巧さん
品質開発部次長・今井真理子さん

この記事は2020年2月時点の情報です。
取扱商品等は変更になっている場合がございますので、ご了承ください。

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