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さあ、爽快を味わおう!新緑と楽しむ ナガノシードル

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日照時間が長く、昼夜の寒暖差が大きいことから、甘くて色づきのよいりんごが収穫される長野県。高い育種技術で様々なオリジナル品種を多数生み出しており、生産量も全国第2位を誇ります。そんなりんごを原料とした醸造酒で、これから初夏にかけて、冬に仕込んだ新酒が出回り始める「シードル」が今長野県で盛り上がりを見せていることをご存知でしょうか?今回はさわやかな飲み口がこれからの季節にぴったりな、ナガノシードル※をご紹介します。

※長野県産のりんごと果実を使い、長野県内で醸造されるお酒

地域に根ざした醸造に取り組むナガノシードルのパイオニア的存在

シードル
サンクゼールでは、「ふじ」「高坂りんご」のほか、「メイポール」や「ブラムリー」を加えた4種類のりんごを使って全6種類のシードルを醸しています。

株式会社サンクゼール(飯綱町)
野村 京平さん

アルコール度数は2~8%と低めで、シュワシュワとさわやかな飲み口が特徴のりんごの醸造酒、シードル。起源は諸説ありますが、11世紀ごろにフランスのノルマンディ地方やブルゴーニュ地方で定着し、りんご栽培とともにヨーロッパ各地へと広がり、19世紀にはアメリカや日本でも造られるようになったといわれています。りんご生産量全国第2位を誇る長野県でも、県内各地で個性豊かなシードル醸造所が相次いで開業するなど、盛り上がりを見せています。

サンクゼールワイナリー本店
飯綱町の小高い丘の上に位置するサンクゼールワイナリー本店。フランスの田舎のような美しい風景が広がります。

そんな長野県におけるシードル醸造の先駆的な存在が「サンクゼールワイナリー」。県内有数のりんごの産地である飯綱町を一望できる高台には、醸造施設、レストラン、デリカテッセン、ショップ、チャペルなどの施設が自然の中にとけこみ佇んでいます。現会長の久世良三さん、まゆみさん夫妻が営む斑尾高原のペンションで、地元のりんごを使った手作りジャムの提供からスタートした同社。ジャムの製造と販売が軌道に乗り始めた1983年にひとつの転機が訪れます。フランスのノルマンディ地方を訪問し、一面のりんご畑と美しい田園風景の中にワイナリーや蒸留所が佇む景色と、その中で誇りをもって生きる人々の姿を目の当たりにしたことで大きな感動を受け、フランスにも負けない、美しい自然に恵まれた信州の地で、田園の豊かさ、心地よさを存分に味わってもらえる商品を生み出していきたいという夢を抱くようになったのです。その後、旧三水村(現飯綱町)の村長との出会いから、1990年に現在の地にワイナリーを創設。自社農園で栽培したぶどうや地元のりんごを使った果実酒造りに取り組み、今では国内に約140店舗のショップを展開、海外にも工場を構えています。

野村さん
りんごの特徴がしっかり出るような醸造を心がけているという野村さん。

2003年からは県内では先駆けとなるシードル醸造もスタート。現在は地元産りんごにこだわった全6種類のシードルを醸造・販売しています。さらにドイツ製の蒸留機を町と共同購入し、2017年からはりんごのブランデー造りにも着手しました。
「飯綱町は昔からりんごの産地。栽培技術が高く、気温、標高、土壌など、りんご栽培に適した環境下で、みずみずしくコクのあるりんごが収穫されています。農家さんも熱意にあふれていて、このように恵まれた環境で醸造できるのは幸せなことですし、造り手としても身が引き締まる思いです」
こう話すのは、醸造開始当初よりシードル醸造に携わる野村京平さんです。

高坂りんご
小ぶりで酸味と渋みが特徴の「高坂りんご」。古来種果実(和りんご)3種類の1つとして、皇居東御苑内の果樹古品種園にも植えられているのだとか。

同社のシードルの中でも代表的なものが、本店限定販売の「高坂りんご」を用いたシードル。飯綱町高坂地区周辺に古くから伝わる和りんごで、昭和に入ると西洋品種のりんごに押され、その姿を見ることはほとんどなくなっていたのですが、町内の1軒の農家が大事に守り続けていました。この「高坂りんご」に新たな価値を見出せないかと飯綱町から依頼を受けてさまざまな特産品の開発に取り組んだところ、ふじと合わせてシードルにすると、独特の渋みが深い味わいを醸し出すことがわかりました。海外の専門家からも高い評価を受け、当初は100本ほどの醸造でしたが、現在は約5,000本を仕込むほど好評を博しています。

蒸留担当の山崎さん
アップルブランデーの蒸留器。ホワイトブランデーのほか、昨年より熟成ブランデーの販売も開始。「おすすめは水とブランデー1対1で割る飲み方。香りが華やかに開きます」と蒸留担当の山崎さん。

「50品種以上ものりんごを栽培する飯綱町には、珍しいりんごを栽培する農家さんもたくさんいらっしゃるので、今後もさまざまな品種を用いたシードル醸造にチャレンジしながら、地元のりんごの可能性を最大限に生かしていきたい」と意気込みを語る野村さん。地域の人たちと協力しあい、飯綱町の活性化にもつなげていきたいと願う「サンクゼール」は、地域とともに夢の実現を目指します。

[株式会社サンクゼール]
上水内郡飯綱町芋川1260 TEL 026-253-8002
https://www.stcousair.co.jp/company


南信州唯一の蔵元の地域と歩むシードル醸造

シードル
日常の中で楽しむカジュアルなものから、ハレの日や贈り物にもぴったりなものまで、あらゆる生活のシーンに寄り添う喜久水酒造のシードル。

喜久水酒造株式会社(飯田市)
後藤 髙一さん

長野県内でも特にシードル醸造の盛り上がりを見せる南信州。この地域唯一の酒蔵である「喜久水酒造」も4年前からシードル醸造に取り組んでいます。第二次世界大戦下の1944年、日本各地で行われた企業合同により、地域の37軒の蔵が合併して誕生した蔵元で、各蔵がさまざまな免許を持っていた経緯もあり、製造量の7割ほどを占める日本酒のほか、焼酎、果実酒、リキュール、みりんなど多岐にわたる酒類を製造・販売。普通酒からハレの日に楽しみたい大吟醸まで幅広く醸造し、さまざまなニーズに応える酒造りに取り組んでいます。

後藤さん
「今後はシードル専用のりんご品種の開発なども含め、南信州のシードルの品質向上を目指していきたい」と後藤さん。

「地元の農産物を使った酒造りを大切にしています。南信州もりんごの産地ですから、必然的にりんごを使った酒造りを行いたいとの思いがありました」と話すのは取締役商品本部長の後藤髙一さん。地域の農家と「喜久水りんご生産者の会」を設立し、現在は9軒の農家から直接、質の高いりんごを仕入れています。フレッシュなりんごで仕込みたいとの思いから、一次発酵の仕込みは10~12月の3カ月間しか行わないこだわりぶり。10月には紅玉など早生種を、11月にはシナノゴールド、秋映などの中生種、12月にはふじを仕込み、最後にさまざまな品種のシードルをブレンドすることで味に深みを出しています。日本酒醸造に使う絞り袋でりんご果汁を絞るなど、日本酒メーカーならではの工夫も。炭酸ガス充填方式、瓶内二次発酵方式、シャルマ方式、トラディショナル方式などさまざまな製造法により醸されるカジュアルなタイプから高品質なものまで幅広いニーズに応える8種類ものラインアップも魅力です。

りんごの洗浄の様子
シードルの原料となるりんごの洗浄の様子(写真はシナノゴールド)。

2013年には地元有志6名で「NPO国際りんご・シードル振興会」も設立。シードルのエキスパートを育成する活動や、世界5カ国の醸造所と南信州のシードル醸造所が組み、コラボレーションしたシードルを造る「グローバル・サイダー・コネクトin南信州」など、南信州発シードルの普及活動にも積極的に取り組んでいます。

喜久水樽
南信州唯一の蔵元として、地域とともに発展することをポリシーとしています。

需要は伸びているとはいえ、まだまだアルコール飲料の世界では“マイナー選手”のシードル。「地域の醸造所同士で手を携えた品質向上や、農家、販売店、飲食店などが一丸となることで、シードル業界全体も盛り上げていきたい」と後藤さんは今後の展望を話します。南信州から県外、国外へ。「喜久水酒造」の挑戦は続きます。

[喜久水酒造株式会社]
飯田市鼎切石4293 TEL 0265-22-2300
https://kikusuisake.co.jp/


初仕込みシードルは完売!新進気鋭のシードル醸造所

シードル
2019年初仕込みのシードル約2,900本は発売5カ月で完売! セカンドヴィンテージは銀座NAGANOでも4月20日より販売予定!

マルカメ醸造所/フルーツガーデン北沢(松川町)
北沢 毅さん・井口 寛さん

農家がワイナリーやシードルリーへりんごを持ち込み、小ロットで醸造する委託醸造も長野県では盛んですが、自らシードル醸造まで行う農家も登場し始めました。
長野県南部に位置する松川町。大正時代から果樹栽培が始まり、戦後、満州からの引揚者による開拓も重なったことで多くの果樹園が誕生。特にりんごの生産が盛んなことから、近年はシードル製造も活発に行われており、2016年にはワイン特区(構造改革特区)※の認定も受けました。そんな松川町で創業79年目となる観光農園「フルーツガーデン北沢」がりんごからシードルまで一貫した自社製造を行うべく立ち上げたのが「マルカメ醸造所」。営業と広報担当の北沢 毅さん、醸造担当の井口 寛さんの兄弟を中心に家族で運営しています。

寛さん(左)と毅さん(右)
「シードルを通じて、地域やりんごの魅力を多くの方に知っていただければ」と寛さん(左)と毅さん(右)。

きっかけは6年ほど前。おいしいりんごが少し鳥につつかれたり割れたりするだけで価値がゼロになってしまうことを残念に思っていたことから、スタッフ皆で「何か加工品を作ろう」と取り組み始めた頃に出会ったのがシードル。5年ほど近隣のワイナリーで委託醸造をしていましたが、次第に「自分たちが丹精込めて作ったりんごを使って、最後まで自分たちの手で仕上げたい」と自家醸造への思いを抱くようになりました。しかし、施設もなければ醸造家もいません。そこで当時九州で働いており、もともと醸造に興味を持っていた弟の寛さんに声をかけます。寛さんはUターンし、伊那市の「カモシカシードル醸造所」で3年間修業を積む傍ら、父や毅さんとともに醸造所の準備を進め、2019年に念願の自家醸造施設を立ち上げました。

作業風景
発酵途中のシードルの様子を確認する寛さん。

初仕込みのシードルは、香り・味わい・余韻・色調・バランスを総合的に評価する「第4回 フジ・シードル・チャレンジ2020」で、甘口がシルバー賞、辛口がブロンズ賞を受賞。それでもその栄誉にあぐらをかくことなく、「初年度の課題を追求しつつ、さらにりんごの香りや果実感を大事にして造っていきたい」と寛さんは話します。

りんご園
果物狩りのほか、バーベキューも楽しめる「フルーツガーデン北沢」。不定期で夜のりんご園ライトアップなども実施。

「松川町には3軒のシードル醸造所があり、それぞれ個性がある。シードル販売に留まることなく、飲み比べツーリズムなど、ほかの醸造所とも協力しあって松川町のシードル文化を作っていけたら」と話すのは毅さん。「シードルを通してりんごのおいしさを知ってもらい、松川町や農園に訪れてもらいたい」というふたりの思いはひとつです。

※地域内の特産物で果実酒を醸造する場合、酒税法で定める最低醸造数量の基準が6kℓから2kℓに引下げられる制度

[マルカメ醸造所/フルーツガーデン北沢]
下伊那郡松川町大島3347 TEL 0265-36-2534
https://fgkita.com/


立科町産りんごと伝統製法で醸す本格シードル

シードル
100%自社栽培の完熟でりんごを使用したシードル

合同会社たてしなップルワイナリー(立科町)
井上 雅夫さん

有限会社たてしなップル(立科町)
市川 大樹さん

高品質な農産物・農産物加工品を提供し、消費者の信頼を得ながら地域振興を図ることを目的に2002年に創設された「長野県原産地呼称管理制度」。味・栽培方法・生産方法など、産地による特徴を個性として積極的に評価しており、現在、日本酒、焼酎、ワイン、シードル、米の5品目を対象とした認定審査会が定期的に開催されています。2007年にシードル部門が創設されて以来、毎年「長野県原産地呼称管理制度」の認定を受けているのが、長野県東部、蓼科山の麓に位置する立科町で地元の果実を使った商品開発や販売を行う「たてしなップル」です。

ワイナリー併設のテイスティングルーム
試飲などができる、ワイナリー併設のテイスティングルームも2021年3月21日にオープン。

「国内トップクラスの高い晴天率や昼夜の寒暖差、蓼科山から流れる清らかな水など立科町の風土に育まれるおいしいりんごを年間を通して味わってほしい」との思いから会社を設立。まずはりんごを丸ごとすりおろしたジュース作りから始め、さらに付加価値をつけるべく、2004年からシードル造りを開始しました。当初は近隣の酒蔵の協力のもと、委託醸造で製造していましたが、年々人気が上がるにつれて需要も高まったことから、さらなる販路拡大を狙うべく、2019年に立科町初となるワイナリーを設立。委託に加え自社でも醸造と販売を始めました。

醸造用タンク
主に一次発酵を行う醸造用タンク。

立科町のふじのみで造られる自家醸造のシードルは、一次発酵で発生するガスをそのまま生かしてスパークリングにするアンセストラル方式(別称メトード・リュラル方式)と呼ばれる製法で醸造しています。

井上さん
瓶内の圧力を測り発酵の度合いを確認する井上さん。

「瓶詰めのタイミングが難しく、そのタイミング次第でわずかながら個体差が出てしまいますが、それも特徴のひとつです」
こう語るのは、アメリカ・カリフォルニアで25年間ワイナリーの経営や醸造経験を持ち、ワイン・シードルの醸造を一手に担う工場長の井上雅夫さん。同じものはふたつとできないことから“生きたシードル”と表現します。また「たてしなップル」のシードルはそのまま食べてもおいしいりんごで造っているので、果実感があって飲み応えがあるのも魅力だといいます。おすすめの食べ合わせを尋ねてみると、企画・営業担当の市川大樹さんが「味がしっかりしているので、肉やソースを使った料理のほか、ブルーチーズなどクセのある料理にも合うんですよ」と教えてくれました。

立科町産りんごを用いたさまざまな商品
シードルのほか、「果肉入りりんごジュース」やりんご果汁をベースにリンゴ酢、ヒアルロン酸、ローヤルゼリー、プロポリスを加えた「林檎美人」など、立科町産りんごを用いたさまざまな商品を展開します。

また、ワインの醸造も手がけ、近隣農家からの委託醸造の受け入れも開始。立科町の風土を生かした果実のおいしさを広めるとともに、地域に貢献する取り組みを進めています。

[たてしなップル問合せ窓口]
北佐久郡立科町茂田井2564-1 TEL 0267-56-2640
https://tateshinapple.jp/


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ナガノシードルの造り手

長野県内では1942年に初めてシードルが造られたといわれています。2000年代に入り、サンクゼールワイナリーや信州まし野ワインなどが醸造を開始。現在はワイナリー、シードルリーと呼ばれる専門の醸造所、酒蔵など40を超える事業者が手がけるほか、農家の委託醸造も盛んで、多種多様なシードルが誕生しています。

※2021年4月 長野県産業労働部日本酒・ワイン振興室調べ

この記事は2021年4月時点の情報です。
取扱商品等は変更になっている場合がございますので、ご了承ください。

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