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新蕎麦の季節到来!ほれ、食わず おらほ自慢の信州蕎麦

そばきり“長野県に行ったら食べたいもの”の不動の一番手、信州蕎麦。とある調査によると「蕎麦がおいしそうな都道府県は」との問いに4割以上の方が「長野県」と回答したそう。それもそのはず、高冷地の穀物として古くから栽培され、一人当たりの蕎麦店数も日本一。蕎麦切り発祥の地とも言われます。
実は、そんな信州蕎麦にもいろいろな品種や製法、盛り付け方、食べ方があり地域によって千差万別。東京ではまず出合えないレアでディープな信州蕎麦をご紹介します。
※ほれ、食わず:「さあ、食べて」の意の方言

とうじそば
とうじそば

地元素材たっぷりの身も心も温まる名物蕎麦

2,000mを越える山々と5つの峠に囲まれ、飛騨と信州をつなぐ野麦峠を源とする奈川の渓谷沿いにある松本市奈川地区。旬の野菜、山菜、きのこ、合鴨肉などを、甘い香りが立ち込める醤油仕立てのつゆを入れた大鍋で煮立て、小割けされた蕎麦を竹製のとうじかごに取ってさっと温める「とうじそば」は、この地発祥の、信州を代表する名物蕎麦のひとつです。
「とうじ」とは、浸し・温めるの意味で、冷たい蕎麦を温かくおいしく食べたいと味噌汁に入れたことが始まりだそう。打ちたての蕎麦を軽くつゆにくぐらせると意外や意外、蕎麦の香りがより引き立つのです。そもそも生活の知恵から生まれた蕎麦が、結婚式など祝いの席の振る舞い料理となり、周辺地域にも広がっていきました。

そして奈川は、上質な蕎麦の産地でもあります。「キタワセ」と「奈川在来」の2品種が栽培されていますが、中でも「奈川在来」は、その名の通り奈川地区原産の蕎麦。1998年の台風被害で一度は栽培が途絶えましたが、一握りの種から20年の歳月をかけ、地域の人々の努力で復活を遂げました。「喉ごしも色も香りもよく力強い味わいが、他の蕎麦とは大きく違いますよ」と、松本市ながわ観光協会副会長の奥原成章さん。年々生産量は増えているものの、今でもほぼ地区内でしか食べられない希代の蕎麦。そして「とうじそば」も松本市街地ではなかなか味わえません。知る人ぞ知る蕎麦の聖地、奈川で本場の味に触れてみては。

とうじそばと雑炊

地区内では3軒の蕎麦店が「とうじそば」を提供しており、写真は食事も楽しめる「旅館 仙洛」のもの。週末には1~2時間待ちの行列ができる人気店で、蕎麦を食べた後はご飯と玉子を入れた雑炊もおすすめ。蕎麦は甘味が強い奈川産「キタワセ」の二八蕎麦で、「奈川在来」は事前予約が必要。

店舗外観[仙洛]
長野県松本市奈川1044-124 TEL 0263-79-2277

[松本市ながわ観光協会]
TEL 0263-79-2125


寒晒し蕎麦
寒晒し蕎麦

凍てつく清流で仕込んだ八ヶ岳西麓の幻の極上蕎麦

晴天率が高くて湿度が低く、冬は氷点下10度を下回る日もある茅野市は、こだわりの蕎麦店が多く、蕎麦の作付面積も県内トップクラス。そんなこの地で「幻の蕎麦」と言われるのが、江戸時代から八ヶ岳西麓に伝わる「献上寒晒し(かんざらし)蕎麦」です。厳選した上質な蕎麦の実を、殻がついたまま大寒の時期に八ヶ岳から流れる清流に1週間から10日ほど浸し、その後1カ月から1カ月半寒風にさらすことで少しずつ水分を抜き、夏まで土蔵で熟成させ、蕎麦の実の中心層のみを製粉し、つなぎを使わず打った「十割蕎麦」。茅野市の限られた店で7月のうち、わずか10日間ほどしか提供されない希少で貴重な蕎麦で、もちもちとした食感と雑味のないふんわりとした上品な甘みが絶品です。当時の最高レベルの技術を要し、夏の土用に食べられる貴重な最上級品であったことから、「暑中寒晒し蕎麦」として将軍家に献上されていました。
明治以降は生産が途絶えてしまいましたが、茅野市産蕎麦のブランド化をめざしていた有志の農家が地元に残る古文書などを頼りに製造方法を数年かけて研究。地域と行政、大学が一丸となって復活させ、その製法を6店の蕎麦店からなる「八ヶ岳蕎麦切りの会」が今に伝えています。

毎年7月の土用の頃だけ数量限定で提供される予約必須の「寒晒し蕎麦」(上/勝山蕎麦店)と、2018年の新蕎麦(下/長寿更科)。「新蕎麦と食べ比べて遜色がない味わいなのが寒晒し蕎麦のすごいところ。夏にそんな蕎麦が食べられることはとても貴重なんです」と「八ヶ岳蕎麦切りの会」の皆さん。茅野市以外にも寒晒し蕎麦を提供する地域があるが、献上した歴史を誇ることから「献上」と冠することができるのはここだけ。

寒晒しの作業

大寒の時期、山間の急な土手の斜面を下り、清流の中で毎日気温と水温を確認しながら蕎麦の実の入った袋をひっくり返す寒晒しの作業。蕎麦の実は生きており、清流にさらして仮死状態になることによって品質を劣化させず保存できるのだとか。蕎麦の実の乾燥中は割れなどを防ぐために昼夜を問わず常に確認し、目を離せない。2016年からは自分たちで畑を借りて栽培を開始している。

「八ヶ岳蕎麦切りの会」の皆さん

「八ヶ岳蕎麦切りの会」の皆さん。左から野澤英樹さん、会長の宮坂新一さん、矢野誠二さん、茅野市の蕎麦のPR活動も行う「ちの観光まちづくり推進機構」の田子直美さん。

そば畑[八ヶ岳蕎麦切りの会]
長野県茅野市金沢2332

[勝山蕎麦店]
TEL 0266-82-3556


まだまだあります、信州ならではの個性豊かな名物蕎麦
須賀川蕎麦・早蕎麦[山ノ内町]
早蕎麦

全国でも珍しい蕎麦の郷土食

標高700~1000mの北志賀高原「須賀川地区」は冷涼な気候で水はけがよく、蕎麦栽培の最適地。つなぎにオヤマボクチ(山ゴボウ)を使う「須賀川蕎麦」と、長野県無形民俗文化財指定の「早蕎麦」というふたつの名物蕎麦があります。「早蕎麦」は茹でた千切り大根を水溶きそば粉で少しだけ固め、だし汁でいただく珍しい蕎麦の郷土食。長野県でもこの地と栄村秋山郷のみで伝えられています。


下條おろし蕎麦[下條村]
下條おろし蕎麦

「あまからぴん」がやみつきに

中央・南アルプスと伊那谷を一望する南信州の下條村。天竜川から沸き立つ朝霧が風味豊かな蕎麦を育みます。この蕎麦に欠かせないのが、伝統野菜の親田辛味大根(おやだからみだいこん)の薬味。大根特有のほのかな甘みのあとに鮮烈な辛さが後を引き、地元民は「あまからぴん」と表現。やみつきになる「あまからぴん」のおいしさが蕎麦と一緒に楽しめます。


富倉蕎麦[飯山市]
富倉蕎麦

北信濃の「幻の蕎麦」

ゆったりとした千曲川の流れと日本の原風景が広がる飯山市の富倉地区。ここの名物が、山ゴボウとも呼ばれるオヤマボクチの葉から、藻草のような繊維のみを取り出し、それをつなぎとして使う「富倉蕎麦」です。つなぎから手間暇かけて作ったその味は、蕎麦本来の香りが引き立ち、独特の喉越しと“ツルツル”“キュッキュッ”とした食感で「幻の蕎麦」とも呼ばれます。


いいじま源蕎麦[飯島町]
いいじま源蕎麦

信州蕎麦の源流がここに

ふたつのアルプスの眺望が素晴らしく、理想の移住スポットとしても注目されている南信州の飯島町。この町は、信濃一号をはじめとして、長野県原種センターが栽培する信州蕎麦の原種(種を取るために撒く種)のさらに元となる種(原々種)の栽培を唯一任されている栽培地でもあります。そんな“種場の蕎麦”が「いいじま源蕎麦」。信州蕎麦の源流とも言うべき味わいが楽しめます。


信州のご当地蕎麦を銀座で食べられる!信州蕎麦Week2018開催!

この記事は2018年11月時点の情報です。
取扱商品等は変更になっている場合がございますので、ご了承ください。

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