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信州のココが好き。信州のココが好き。

俳優 役所広司さん

役所広司さん縁あってこの地を訪れるようになって26年、前回の御柱祭で幸運にも一日だけ御柱を曳かせていただく機会に恵まれました。七年に一度のこの祭りが近づくと、諏訪出身の友人も、他から移り住んだ友人も、何やらそわそわと落ち着きがなく、テンションが上がり、なかなか掴まらない。特に職人さんたちは開店休業状態です。

前回私は、ある区間だけ曳かせてもらったのですが、皆がこの祭りに心を奪われる訳が少しだけ分かったような気がしました。祭りは規律も厳しく、大昔から代々受け継がれてきた奥深さを感じました。

役所広司さん何より感動したのは、曳いた御柱から出る木くずやギャラリーが捨てたゴミを小さな子どもたちが塵取りと箒を持ち、きれいに掃除をしながら隊列の後ろをついて来る姿。この子どもたちがいつか御柱祭を仕切り、また後輩を育てるんだろう。今、御柱に乗って叱咤激励しているベテランも、かつてはこうして掃除しながら先輩の勇姿に憧れていたんだろうなぁ~。そう思いながら御柱を曳いていると何だか熱いものが込み上げてきました。

御柱の大木を曳いていると自分がまるで蟻のような、小さな生き物であることも実感しました。皆で一斉に力を合わせて御柱が動く瞬間は快感です。でも「俺ひとりくらい手を抜いても大丈夫だろう……」と思った途端に御柱はピクリとも動きません。人間一人の力はちっぽけでも皆の力が合わさったとき、とてつもない力になる。

それを体で知ることができたことは、本当に貴重な体験でした。
今年の御柱祭の大成功を祈っています。

– Profie –
1956年1月1日生まれ。長崎県出身。83年、NHK 大河ドラマ『徳川家康』で織田信長役を好演し、脚光を浴びる。96年には『Shall we ダンス?』をはじめ国内の14の映画賞で主演男優賞を独占。05年には『SAYURI』、続く06年には『BABEL』に出演し、海外でも高い評価を受ける。12年には紫綬褒章を受章。昨年公開の『日本のいちばん長い日』においても日本アカデミー賞 優秀主演男優賞を受賞している。

信州のココが好き。