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ライフスタイル・オブ・信州ライフスタイル・オブ・信州

信州ではじめる 新しいつながり自分らしい暮らし

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今、大都市集中型の社会構造が見直され、テレワークなどの新たな生活スタイルが浸透し、地方の暮らしが改めて脚光を浴びています。長野県は移住専門誌「田舎暮らしの本」の「移住したい都道府県ランキング」で15年連続1位に選ばれるなど、人気の移住先となっています。なぜ長野県を移住先に選んだのか、各地域では移住者をどのように受け入れているのか、長野県で新たな生活をスタートさせた人、そして移住者に寄り添う人たちを訪ねました。

人と人との関わりから新たなムーブメントが巻き起こり続ける辰野町

空き家DIY改修の様子
空き家DIY改修の様子。2016年の初回物件を皮切りに、1年間で1件ずつ、これまでに計5件の空き家をこのDIY改修プロジェクトで手がけてきました。

辰野町職員
野澤 隆生さん

一般社団法人◯(まる)と編集社
赤羽 孝太さん

古民家民宿おおたき
大瀧 利久さん・恵子さん(辰野町)

本州のほぼ真ん中に位置する辰野町。一般的には、「住居環境」「仕事」「支援制度」、そして子育て世代なら「教育」が移住にとって大切なポイントとされていますが、辰野町が力を入れたのは「人と人をつなぐ」という独自のスタイル。その仕かけ役ともいえるのが、辰野町職員の野澤隆生さんと一般社団法人◯(まる)と編集社の赤羽孝太さんです。このふたりが中心となってさまざまな取組みが沸き起こり、わずか2年で移住世帯が5倍に増えたといいます。

そんな辰野町も、当初は「住居」の問題を何とかしようと、空き家物件情報を収集し、ホームページ上などで提供する「空き家バンク」を2014年に立ち上げるところから取組みを始めました。しかし、思うように物件の登録数が伸びません。地元の方の声は「こんなボロ家、人が住むなんてムリ」「見知らぬ人が来るのはちょっと…」というものでした。

野澤さんと赤羽さん
野澤さん(左)と赤羽さん(右)。野澤さんは現在商工関連の部署へと異動になりましたが、仕事面で人と人をつなげる活動を続けています。

当時、移住定住などを担当していた野澤隆生さんが協力を求めたのが、地域おこしを行う「集落支援員」として辰野町へと拠点を移した一級建築士の資格を持つ赤羽孝太さん。ふたりは地域おこし協力隊とも手を組み、「空き家バンク成約物件のDIY改修プロジェクト」を始めました。これは、モデルハウスとして公開することを条件に、移住者と地域住民らが協力しあってDIYで家を改修するもの。共同作業やその様子に興味を抱いて参加してきた地元の方との交流を通じ、移住者は早くから地域との関係を築くことができる一方、地元の方にとっても「ボロボロだった家がこんなに変わるんだ」と空き家への意識を変えるきっかけとなりました。今では空き家バンクも年間約30件が新規登録され、78%が契約・交渉中という驚異の稼働率を誇っています。

大瀧さんご夫妻
大瀧さんご夫妻。この地に訪れた際、高尾山にも咲いているような山の植物が道端に咲いている様子に驚いたという恵子さん。利久さんも「この山と自然のすばらしさを多くの方に感じてほしい」と話します。

2016年、空き家バンクのホームページで見かけた築約140年の大きな梁のある古民家に一目惚れして、辰野町への移住を決めたのが大瀧利久さん・恵子さんご夫妻です。43年間、誰も住んでいなかった家は、人が住めるとは思えない状態でしたが、東京と辰野町を行き来しながら約半年間をかけてリノベーションを進めました。

古民家民宿おおたき
県内外から人が訪れる「古民家民宿おおたき」。もともと養蚕をしていた古民家を改修し、2階の大きな窓からは四季折々の風景を楽しむことができます。

大瀧さんは現在、その家で「古民家民宿おおたき」を営んでいます。ランチ営業もしており、恵子さんがバングラデシュの方から習った本格カレーが人気とのこと。地元の方をはじめ、多様な人々の交流の場にもなっており、一昨年の正月に開催された「もちつき大会」もその一例。移住者や地元の方、移住希望者など約40人が交流を深めたそうです。

Equinox STORE
かつての薬局をリノベーションした「Equinox(イクイノックス) STORE」。雑貨店、アパレルショップ、コーヒースタンドなどが入る複合店舗です。

「人と人をつなぐ」。このコンセプトは辰野町のオーダーメイド型の移住相談にも生かされており、官民一体となって移住希望者のニーズに寄り添い、適切な人や場所へとつなげます。最近では新たなチャレンジを始める人が、さらに人を引き付けるという連鎖が起き始めているのだとか。そのひとつが、今年3月にオープンした「Equinox(イクイノックス) STORE」。まちづくりプロジェクト「トビチ商店街」で開催されるイベントに定期的に参加していた松本市のアパレル店とコーヒーショップ、箕輪町の美容雑貨店のオーナーが「辰野町なら面白いことができそう」と意気投合し、3業種をひとつの店舗に集めた新しいスタイルのお店です。

「いろいろな関わり方があっていいと思うんです。辰野町をお気に入りの場所にしてもらって、さまざまな価値観の中、多様な文化が生まれる町になれば」とこれらの動きにわくわく感をにじませる野澤さんと赤羽さん。人と人との関わりが、新たなムーブメントとなり、辰野町に鮮やかな彩りを見せています。

詳しくはこちら https://www.ginza-nagano.jp/topics/48102.html


地域ぐるみの教育環境が人気を集める美麻地区

総合学習の様子
各学年ごと定められたテーマに沿って地域で学ぶ総合学習の様子。

前川 浩一さん・北村 大士さん(大町市)

立山黒部アルペンルートの玄関口として有名な大町市の北東部に位置する美麻地区(旧美麻村)。山間部にありながらも人気の移住先で、中には移住者の割合が9割を超える集落もあるというから驚きです。

美麻地区を語る上で欠かせないのが、30年前、大阪府からこの地に移り住んだ前川浩一さんの存在です。この地区唯一の学校で、小中一貫校でもある大町市立美麻小中学校は、地域住民が学校運営に参加する「コミュニティ・スクール」の認定を2014年に取得。前川さんは「地域学校協働コーディネーター」として地域と学校との連絡調整や企画提案などを行うとともに、地域と子どもたちをつなぐハブ的な役割を果たしています。

前川さん
前川さんは地域活動に加え旅人民宿「しずかの里」や、手打ち関西風うどんを提供する食堂も切り盛り。

美麻小中学校の特徴のひとつが、子どもたちが地域に出て、地域のことを学ぶ総合学習。特に7年生以降は子どもたちが自ら考えたテーマについて3年間かけて学びを深めるそうで、前川さんは毎週学校に顔を出し、子どもたちのアイデアを聞き、時にはアドバイスをしたり、地域の人を紹介したりします。

美麻カルタと花豆
(左)この春に卒業を迎えた生徒たちが約5年をかけて作り上げた「美麻カルタ」。
(右)2016年、当時の8年生が特産化を目指して挑戦を始めた花豆栽培。その思いは後輩へと引き継がれ、2018年7月には銀座NAGANOでイベントやテスト販売も実施。

「地域住民の協力を得ながら、特産品の花豆を使ったスイーツ開発や、地元を紹介する地図やかるた作りを手がけた子どもたちもいるんですよ」とうれしそうに話す前川さん。「基本的に答えは教えない」と言いながらも、困ったり、戸惑っている時には手を差し伸べるといいます。

北村さんご夫妻
美術大学で学んだ北村さんご夫妻。「今の取組みに加え、絵描きやものづくりなど創作の場づくりにもチャレンジしたい」と話します。

そんな美麻地区の取組みに共感し、2018年に神奈川県から移住してきたのが北村大士さん一家。奥さんと3人の子どもの5人家族です。保育士の資格を持つ北村さんは、親同士が子どもの面倒をみる自主保育を行う認可外保育施設「こどものにわ」を今年の5月に立ち上げ、代表を務めています。

移住のきっかけは、神奈川県で親しくしていた家族が美麻地区に移住していたこと。何度かこの地を訪れる機会があり、そこで生まれた地域の人とのつながりが決め手になったといいます。そうしたつながりが教育の場面にも広がる美麻地区は、北村家のスタイルに合っていたのでしょう。
「田んぼや畑があって、自然の中を自転車で走る、平凡だけどそんな毎日の生活が心地いいんです。田舎だけど、市街地にもほど近くて暮らしやすいですよ」と北村さん。

地域全体が教育に関わる環境、そして多様な価値観を受け入れる地域の人たちの存在こそ、子育て世代の移住先に選ばれている理由です。

詳しくはこちら https://www.ginza-nagano.jp/topics/48104.html


夢の実現のために選んだ地、南木曽町でヤギとともに

牧場
山を切り開き牧場に。豊かな自然の中で56頭のヤギが元気に暮らしています。

マウカラニ ゴートファーム
三輪 亜希子さん(南木曽町)

木曽路妻籠宿などで知られる南木曽町。その山間の集落でヤギの飼育とチーズの製造販売を行うのが「マウカラニ ゴートファーム」オーナーの三輪亜希子さんです。

三輪さんは教育現場での仕事を退職し、畜産を学ぶためにハワイ大学に留学。多様な動物との触れ合いの中で、とりわけヤギに興味を抱くとともに、ハワイで食べたヤギのチーズのおいしさの虜になりました。卒業後はハワイ島の牧場でインターンとして働き、ヤギの世話をしながらチーズ作りを見学する中で、「いつか牧場でヤギを飼い、自分でチーズを作ってみたい」との思いが募るように。しかし、お金も土地もないことから、帰国後はその思いを胸にしまい込んだといいます。

しかしある日、南木曽町で遊休農地を借りて畑を耕す活動をする友だちを訪ねた際、「ここなら土地もあるし、地域おこし協力隊の制度を活用して夢に挑戦できるよ」との提案を受けたそう。周囲の前向きな後押しも重なり、夢を実現するため南木曽町への移住を決めました。

三輪さん
今後は設備を整えてセミハードタイプのチーズにも挑戦したいという三輪さん。

常夏のハワイと冬の寒さが厳しい南木曽町では正反対のように思えますが、「森に囲まれ、視界に人工物が何ひとつ見えない様子がハワイ島の牧場と似ていて、この地に立った時に牧場を経営するイメージがあふれてきたんです」と三輪さん。故郷の愛知県からも近く、外国人も多く訪れる観光地であることも移住の決め手となりました。

ヤギチーズ
ヤギチーズ独特の臭みが出ないよう、朝と夕方の2回搾乳したミルクを新鮮なうちに仕込んでいるそう。

南木曽町の地域おこし協力隊としての活動を始めると同時に、街中に借りた家の裏庭で3頭のヤギを飼育し、家の台所での試作から始まった三輪さんのチーズ作り。時にはハワイの牧場の恩師からも教えを受けながら技術を磨き、2019年には牧場を開業、念願のチーズ販売までこぎつけました。「チーズ作りは試行錯誤の連続。ようやく最近、おいしいといってもらえ、自信を持って出せるチーズが作れるようになってきました」と話します。

マウカラニ ゴートファーム
マウカラニ ゴートファーム(MAUKA LANI GORT FARM)のMAUKAはハワイ語で「山側の」、LANIは「天国、広い空」を意味します。

「もう一度人生の分岐点があったら同じ道は選ばない。大変だから」と冗談交じりに話す三輪さんですが、「“田舎ものはおせっかいなんだよ”といいながら地域の人たちがサポートしてくれる喜びが大変さよりも大きいから頑張れるんです」と続けます。町に新たな風を起こすべく、三輪さんの奮闘は続きます。

詳しくはこちら https://www.ginza-nagano.jp/topics/48106.html

[MAUKA LANI GOAT FARM(マウカラニゴートファーム)]
木曽郡南木曽町吾妻4650-87 TEL 0264-58-2500
https://www.maukalanigoatfarm.com

INFORMATION

銀座NAGANO入荷予定 ※次回は8/25の予定


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銀座NAGANO4階では、U・Iターン支援や移住・週末の信州暮らし、就職相談まで、ワンストップサービスで対応しています。ハローワークも併設されていますので県内求人情報の紹介状もその場で発行可能! 皆さんの信州への憧れや夢の実現、お手伝いします!
※現在原則オンラインにて各種相談を承っています。

写真左から、就職ナビゲーター 杉浦浩子さん、信州暮らし案内人 山越典幸さん、銀座NAGANO職員 佐藤瑞穂さん

この記事は2021年8月時点の情報です。
取扱商品等は変更になっている場合がございますので、ご了承ください。

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