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信州ではじめる 新しいつながり 自分らしい暮らし Vol.1
「人と人との関わりから新たなムーブメントが巻き起こり続ける辰野町」

本州のほぼ真ん中に位置する辰野町。東日本随一といわれるホタルの名所、松尾狭には6月の最盛期に県内外から多くの観光客が訪れます。一般的には、「住居環境」、「仕事」、「支援制度」、そして子育て世代であれば「教育」が移住にとって大切なポイントとされていますが、辰野町が力を入れたのは「人と人をつなぐ」という独自のスタイル。

その仕掛け役ともいえるのが、辰野町職員の野澤隆生さんと一般社団法人◯と編集社の赤羽孝太さんです。この2人が中心となり、様々な取り組みが沸き起こり、わずか2年で移住世帯が5倍にも増えたといいます。

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野澤隆生さん(左)と赤羽孝太さん(右)

 

「DIYプロジェクト」で変化をとげた空き家と人々の意識

そんな辰野町でも、当初は「住居」の問題を何とかしようと、空き家物件情報を収集し、ホームページ上などで提供する「空き家バンク」を2014年に立ち上げるところから取組みをはじめました。

2017年の調査では町内に500件もの空き家があることが判明し、空き家対策も重要な課題に。しかし、思うように物件の登録数は伸びません。地域の人の声は、「こんなボロ家、人が住むなんてムリ」「見知らぬ人が来るのはちょっと…」というものでした。

町職員で、当時、観光や移住定住、インターンシップなどの担当だった野澤隆生さんが協力を求めたのが、地域おこしを行う「集落支援員」として辰野町へと拠点を移した一級建築士の資格を持つ赤羽孝太さんでした。2人は地域おこし協力隊とも手を組み、「空き家=価値のあるもの」と捉えた新たな策を練りはじめました。

とはいっても与えられている予算はわずか15万円。そのすべてをつぎ込み始めたのが「空き家バンク成約物件のDIY改修プロジェクト」です。これは、モデルハウスとして公開することを条件に、移住予定者と地域住民らが協力しあい、DIYで家を改修するもの。半年間でのべ250人が参加した2016年の初回物件を皮切りに、1年間で1件ずつ、これまでに計5件の空き家がこのDIY改修イベントで改修され、住居となっています。

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空き家DIY改修の様子

移住希望者と地元の方が一緒になって作業をしたり、その様子に興味を抱いた地元の方との交流を通じて、移住前から地域との関係が築くことができます。

一方、地元の方にとっても「あのボロボロだった空き家がこんなに変わるんだ」と空き家への意識を変えるきっかけとなりました。

今では空き家バンクも年間約30件の新規登録され、1年後には78%が契約交渉中という驚異の稼働率を誇るまでになりました。

住民との交流の様子

空き家DIY改修の休憩タイムの様子

 

古民家に一目ぼれし移住を決意。今では多様な人が集まる場に

2016年、空き家バンクのホームページで見かけた築約140年の大きな梁のある古民家に一目惚れして、辰野町への移住を決めたのが大瀧利久さん、恵子さんご夫妻です。

2人は府中市で40年にわたりブティックを経営していましたが、動けるうちに田舎暮らしをしたいと考え、インターネットなどを通じて移住先を探しはじめました。もともと登山が趣味で田舎に来ることも多かったという大瀧夫妻。利久さんが愛知県出身ということもあり、愛知県の奥三河など、長野県に限らず移住先を探していたそうです。

大滝さんご夫妻

大瀧利久さん、恵子さんご夫妻

 43年間も人が住んでいなかった家にはほこりやチリが積もり、とても人が住めるとは思えない状態でしたが、「この家を私たちが買わなければ、やがて朽ちてしまう。それが残念に思えた」と大瀧さん。東京と長野を行き来しながら業者の力も借り、掃除をしたり漆喰で壁を塗ったりとリノベーションを進め、約半年をかけてようやく住める状態になりました。

古民家大滝

養蚕をしていた古民家を改修した「古民家民宿おおたき」。中に入ると大瀧さんが一目ぼれしたという大きな梁が目を引きます

大瀧さんは現在その家で「古民家民宿おおたき」を営んでいます。高速のインターチェンジや駅からのアクセスも良いことから、県内外からお客さんが訪れます。ランチ営業もしていて、恵子さんがバングラデシュの方から習った本格カレーが人気とのこと。

古民家民宿おおたき

「古民家民宿おおたき」の2階。大きな窓からは四季折々の風景を楽しむことができます

誰も知らない地域に飛び込むことは少なからずみんな不安をかかえていますが、「町の人に受け入れてもらえて、気にかけてもらっていることがとてもありがたい」と大瀧夫妻は話します。

今では地元の方をはじめ多様な人々の交流の場にもなっており、一昨年のお正月に開催された「もちつき大会」もその一例。移住者や地域住民、移住希望者など約40人が、朝から雪が降る中、臼と杵を使ったつきたての餅をみたらし風やあんこ餅などにしてわいわいと楽しんだそう。

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一昨年のお正月に開催した「もちつき大会」の様子

 

人と人とのつながりから新たな動きが巻き起こり続ける

「人と人をつなぐ」。このコンセプトは辰野町ではオーダーメイド型の移住相談にも生かされています。移住を希望する人がどんな人で、どんな生活を望んでいるのか、それぞれスタイルがあるもの。辰野町では官民一体となって、移住希望者ニーズに寄り添い、適切な場所や人へとつなげます。

商工関係の部署へと異動となった野澤さんは現在も、仕事面でも人と人をつなげる活動を続けています。その原動力を訪ねたところ「もともと人が好きなんですかね。しょっちゅう色んな人と会っています。辰野町の人口2万人を切っていることもあって、どこにどんな人がいるかだいたい把握できていて、例えば音楽好きといえば“バンドをしているあの人を紹介しよう”などすぐ思い浮かんできますね。」と野澤さん。今まで、野澤さんや赤羽さんの目立てで何人もの人がつながりました。

最近では能動的に新たなチャレンジをはじめる人が更にまた人を引き付けるという連鎖が町のいたるところで起き始めているといい、その一例が、“トビチ商店街”の一員として2021年3月にオープンした、Equinox STORE(イクイノックス ストア)です。

トビチ商店街で行われているイベントに定期的に参加していた松本市のアパレル店とコーヒーショップ、箕輪町の美容雑貨店が「辰野町なら面白いことができそう」と意気投合して、3業種を1つの店舗に集めた全く新しいスタイルのお店を誕生させました。

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かつての薬局をリノベーションした「Equinox STORE」。雑貨店、アパレルショップ、コーヒースタンドなどが入る複合店舗です

「この店ができたことは、ランドマークとしてすごく大きいです。 外部の方が町に投資して事業を始めてもらい、ここが起点となり、 周辺の店舗も加わってイベントが開催されたり、商店街に点々とある新たなお店や元々あったお店の活性化にもつながっています」と赤羽さん。

 

“関係人口”から“共創人口”へ

「これまでは『関係人口』、つまり、どんな関わり方でも良いからおもしろい人を増やそうという活動フェーズでしたが今は『共創人口』、住民も移住者も、どちらもお客さんにならずにやりたいことが同じ方向だから共に取り組むという流れができはじめている」と野澤さん。

赤羽さんも「移住絶対主義じゃなくって、地元民だったり、2拠点居住だったり、旅行者だったり、いろんなかかわり方があっていいと思うんです。辰野町をお気に入りの場所にしてもらって、さまざまな価値観の中多様な文化が生まれるまちになれば」とこれらの動きにわくわく感をにじませます。

「町のあちこちで“化学反応”が起こっている」と野澤さんと赤羽さんが表現するように、人と人との関わりが、新たなムーブメントとなり、辰野町に鮮やかな彩りを見せています。

 

※この記事は2021年8月時点の情報です。取扱商品等は変更になっている場合がございますので、ご了承ください。

 
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