LANGUAGE

銀座NAGANOのご案内銀座NAGANOのご案内

うまいチーズは“山”にあり Vol.1
清水牧場チーズ工房

理想の“アルパージュ”を求めて

清水牧場チーズ工房 清水則平さん、晴美さん

乗鞍岳と御嶽山の中間に位置する鎌ケ峰の中腹。標高1,500~1,600mのゆるやかな傾斜地に広がるまきばの中で14頭のブラウンスイス牛と60頭のフライスランド羊を育て、“山のチーズ”作りに情熱を傾けるのが、清水牧場チーズ工房の清水則平さん、晴美さん夫妻です。

02_DSC03613

憧れの“牛飼い”に

子どものころから“牛飼い”に憧れていたという則平さん。獣医畜産学部在学中に実習で訪れたご縁から、1982年に独立し、岡山県で念願だった乳牛の牧場経営を始めました。しかし、牛舎で餌を並べ、ミルクを搾る生活は、則平さんが思い描いていた“牛飼い- 広い牧場で牛を放牧し、そのミルクを搾る -” というイメージとは異なるものだったといいます。自問自答する日々が続く中、牛とミルクの関係性を徹底的に勉強し直した清水さんご夫妻。その時、2人の感性を刺激したのがチーズです。

03_7Z1A2848

「文明の始まりとともに野生動物の家畜化がはじまり、人が集落をつくり共同で作業をするようになった頃からチーズ作りが始まったんです。だからはるか昔から人類や家畜の歴史とチーズの歴史ってもう切り離せないくらい密接な関係があるんです。」と晴美さん。

 

“アルパージュ”への憧れ

念願のチーズ作りを始めてからも、毎週のようにフランスからチーズを取り寄せるなど、チーズ作りに対する知識を深めていく中、“アルパージュ”という山岳地帯のチーズ作りに、強い憧れを抱くようになりました。

「チーズの本場のヨーロッパでは、その地の気候風土に合った牛を飼い、そのミルクでチーズを作るというスタイルが当たり前。土地によって、作られているチーズの種類も味も全然違うんですよ。その中でも私たちが理想としたのは、“アルパージュ”という標高1,500m以上の高地で初夏から秋まで牛を放牧し、良質な自然の草を食べさせ、そのミルクからチーズを作るスタイルでした」

04_DSC03515

時を同じくして、アルプスの山岳地帯で飼育される牛「ブラウンスイス」を知り、当時日本で唯一ブラウンスイス牛を飼育する山梨県の日野水牧場に赴いた清水夫妻。
「ミルクも飲ませてもらった瞬間に “これだ!この牛とミルクならアルパージュができる”と思った」という則平さん。

ブラウンスイス牛

ブラウンスイス牛

標高の高い牧場で、このブラウンスイスを飼ってチーズを作りたいという思いを募らせますが、当時営んでいた岡山の牧場の標高は450m。“アルパージュ”が実現できる、標高1,500m以上の地として思い浮かんだのが3,000m級の山々が連なる長野県でした。

 

“理想の地”を求めて長野へ移住

思い描く地を探すためには、まずは長野県内に腰を据える必要があると、長野県北御牧村(現東御市)に移住し営業を再開。その牧場は標高750mと理想に届く場所ではありませんでしたが、理想の地を探したいと思う反面、忙しい日々を過ごす中で気づけば17年もの歳月が経過していきました。そんなある日、偶然にも大学時代の先輩が夫妻を訪ねてきたことが契機となり、理想の地と言える現在の地、松本市奈川(当時奈川村)にたどり着いたのです。

2005年の秋、現在の地に工房をオープン

2005年の秋、現在の地に工房をオープン

“理想の地”での“アルパージュ”

5月、長く厳しい冬が終わるとともに始まる放牧。朝の搾乳が終わると6時ごろには牛たちが一斉にまきばに向かって森の中を駆け上がっていきます。広大なまきばの中で自生する草を食べ、山から流れ出る清らかな水を飲み、のんびりと過ごす牛や羊たち。
15時ごろになるとふたたび自然と小屋に戻って来るのだそう。

小川の水で喉を潤すブラウンスイス牛(左)と大好きな晴美さんのそばに集まるフライスランド羊(右)

小川の水で喉を潤すブラウンスイス牛(左)と大好きな晴美さんのそばに集まるフライスランド羊(右)

そんな自然豊かな環境で育ったブラウンスイスや羊のミルクで作るチーズはふわりと自然の香りを感じることができます。

 

気候風土にあった“山のチーズ”づくり

「フランスで生産者さんを回っていると、だいたいの農家さんって1~2種類のチーズしか作っていないんです。昔から引き継がれてきたその土地の気候風土に合ったチーズを作ることにこだわりをもっているからなんでしょうね。同じように私たちもこの奈川の気候風土に合ったチーズを作ることを意識しているから、フランスの山岳地帯で伝統的に作られているような“山のチーズ”しか作りません」と清水さん。

09_商品

清水牧場チーズ工房のチーズの一例

山のチーズは熟成が長い半硬質から硬質であることが特徴で、大きさも作る人によって様々。“山のチーズ”にこだわりがあるからこそ、清水さんが作るチーズは高山の良質な草を食んだ牛の滋みがあふれる深い味わいなのです。

 理想の地を追い求め、25年もの歳月をかけ理想の牧場と工房を手に入れた清水夫妻。山岳の大自然に育まれる清水牧場のチーズには、清水夫妻の情熱が凝縮されています。

 

※この記事は2021年12月時点の情報です。取扱商品等は変更になっている場合がございますので、ご了承ください

  • 信大クリスタル®
  • フランス人食材研究家の長野テロワール旅
  • 麹が拓く食の新たな可能性
  • 踊らまいか!信州の風流踊り
  • 信州ブランドアワード2022受賞者決定
  • なぜ信州味噌なのか
  • 長野のご当地パン 牛乳パンの魅力に迫る
  • 信州の酒はテロワールを語る
  • 信州の肉を喰らう!第2弾
  • 南信州の人々と風土が育む「市田柿」(WEB限定記事)
  • 信州の肉を喰らう!第1弾
  • 制約を乗り越え旨くなる長野の米づくり
  • 里山のクラフトジン
  • NAGANO WINE物語
  • 長野とあんず