《特集記事》NAGANO WINE物語 vol.2
【千曲川ワインバレー】ヴィラデストワイナリー
2022.07.20
千曲川ワインバレー
ヴィラデストワイナリー 玉村 豊男さん 小西 超さん
小諸市から中野市まで、千曲川に沿って広がる「千曲川ワインバレー」。小規模ながらも個性豊かな新進気鋭のワイナリーが年々増えている産地です。その先駆け的な存在ともいえるのが2003年に開業した「ヴィラデストワイナリー」のオーナー、玉村豊男さんです。
「景色のいい田舎で畑をやりたくてこの地を選びました。なだらかな斜面が南西に広がっており日当たりが良い様が、僕がかつて留学生活を送り、幾度となく訪れたフランスのブドウ畑を彷彿させました。そこで、苗を調達して、1992年にシャルドネ、メルロー、ピノノワールの3種類を500本ほど植えたんですよ」と玉村さん。
玉村さんが開墾した土地はかつての桑畑。明治から昭和初期まで、東御から上田にかけて桑畑が広がり、多くの農家が養蚕を営んでいました。しかし戦後になると、養蚕は衰退し、桑畑も放置されるように。荒れ地と化した畑が50年ほどの時を経て、今、ワインブドウ畑へと再生しつつあります。
「私はシルクからワインへって表現していますが、特に千曲川沿岸の河岸段丘が開けた地域は、風が通ることから虫がつきにくく、良い蚕ができていたそうです。桑とブドウは、栽培条件が似ていることもあり、全国的に良質なワインをつくるぶどう畑の多くは桑畑を再生したところが多いんですよ」
ワイン用ブドウは乾燥した気候を好む植物。東御市は日本でも1、2を争うほど雨が少なく、日照時間も長い地域。さらに寒暖の差が大きく、風通しが良いという気候がワイン用ぶどう栽培にピッタリ合っているそう。
「『ここは約850mと標高が高く、寒すぎてワインはできないよ』と言われましたが、温暖化の影響か、温度が上がってきたこともあり、10年ほど経って良質なブドウが育つようになってきました。最初は道楽半分で始めたワイン用ブドウ栽培ですが、今や先見の明があると言われるぐらい、この標高の高いとこが良くなっている」
ヴィラデストワイナリーも国内外のワインコンクールで多くの受賞歴を誇るなど、高品質なワインを多く生み出しています。しかし、ワインの魅力はその多様性にあると玉村さんは言います。
「ワイン造りとは、土地ごとに異なる風土の中で育まれたブドウが表現する『その土地の価値』をワインを通して表現すること。そのため優劣をつける類のものではなく、ワインを飲み比べ、その土地ごとの違いを感じることが、本当の楽しみ方なのだと思っています」
創業当時から玉村さんとともにブドウ作りに携わる小西超さんも「気候だけではなく、長野県のワインぶどう作りに関わってきた先人たちの努力が今につながっているのだと思います。なので、人の力も風土のひとつになるのかな」と続けます。
食事と一緒に楽しむことができるのもワインの魅力のひとつ。
「ワインのある食卓を想像すると、ワインの他、料理や食卓を囲む人々の姿が思い浮かびますよね。ワインが広がることによって、チーズ工房や、肉や魚などの生産者も集まってきたり、それらを楽しむためのレストランや滞在のためのホテルもできるなど、食の文化や観光の発展にもつながるものだと思います」と玉村さん
テロワールによる違いを楽しむワインだからこそ、ぶどうを育む自然を感じ、醸造するつくり手たちと触れ合い、その土地ならではの食とともにワインを楽しむワインツーリズムも注目を集めており、長野ワインの新しい楽しみ方の模索も進められています。
※この記事は2022年7月時点の情報です。取扱商品等は変更になっている場合がございますので、ご了承ください