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【特集記事】麹が拓く食の新たな可能性
vol.2 甘酒×焼き芋の新感覚スイーツでこうじの魅力を発信
若宮麹屋

有限会社若宮糀屋4代目
代表取締役社長 花岡 拡和さん(左)
女将 花岡 慶子さん(右)

県下有数の味噌の生産地、岡谷市。明治から昭和初期にかけては蚕糸業のメッカとしても知られ、多くの製糸工場では工女が住み込みで働き、食事に使う味噌は工場ごとに仕込まれていました。そのため、元は工場の宿舎だったという蔵が多いのが特徴です。

明治19(1886)年創業の「若宮糀屋」も、かつては養蚕と、味噌の原料であるこうじの両方を生業としていたとか。製糸業の衰退後もこうじ造りを続け、今では諏訪圏域に残る唯一のこうじ専門店になりました。

▲味噌も製造しており、蔵の中の味噌の大豆を蒸す釜は、かつて製糸現場で蚕を煮ていたもの

こだわりは、味噌用、甘酒用、販売用でこうじを造り分けていること。ポイントは温度管理だそうで、生こうじで粒が柔らかいのが特徴です。また、販売用のこうじは木製の平たい室蓋(むろぶた)を使う昔ながらの製法を変わらず続けています。

▲蒸した米に種こうじをつけ、室蓋に移してから3日かけてこうじを育てている。

▲現社長で4代目の花岡拡和さん。2代目だった祖父は自転車の後ろにリヤカーをつけ、こうじが入った室蓋を何百枚も積んで各家庭に販売したそう。

▲蒸し米に種こうじを付ける機械。手作業と機械化を組み合わせたオリジナリティのある製法。

こうして造るさまざまな米こうじなかでも、特に「若宮糀屋」ならではの誕生秘話があるのが、甘酒用です。

これは、かつて先代がこうじの時間管理を失敗し、発酵の過程で米が溶けてベタベタにしてしまった米こうじをベースに、当時、修業中の身であった拡和さんが「なんとか生かしたい」との思いで開発したのだそう。甘酒が一番甘くコクが出るこうじを研究した結果、米のコクと旨味が際立つこうじが生まれました。

▲甘酒は、最近パッケージをリニューアルした。高級感が漂う瓶のストレートタイプと濃縮タイプがある。

▲こうじの商品は店頭販売も(各パッケージはリニューアル前のもの)。

そして、その甘酒を使い、2020年に生まれた大ヒット商品が「甘酒焼き芋」です。低温でじっくりと焼いた芋に、糖度35度以上の濃厚な甘酒をたっぷりと塗り、再び焼いたら出来上がり。

 

素材の旨みに、ほのかな甘酒の風味が香り、香ばしい焦げ目との相性も抜群です。サツマイモは“シルクの街”岡谷が普及に力を入れているシルクスイートを使用。シルクのようになめらかな舌ざわりと上品な甘さが特徴のサツマイモです。

店頭で販売を始めると、おいしさが一気に評判となり、客数は従来の3倍に増加。客層も、以前に比べ若い人が増えたそう。当初は手探りだったため冬季のみの販売でしたが、今では通年販売して通販も開始し、すっかり主力商品のひとつになりました。

▲通販では2本パックを冷凍で発送。また、店頭では、夏は冷やし、冬はホットショーケースで提供する。

 この人気商品が生まれた背景にあるのは、地元愛です。

「コロナ禍でさまざまなイベントもなくなり、外出も楽しめないような状況でした。そこで、店に足を運んで買い物に来てくれるお客様に喜んでもらえるような、こうじ屋ならではの独自性のあるものを作って地域を元気づけたい、自分たちの仕事を通して社会に何かアクションを起こしたいと思っていました」

こう話すのは、女将の慶子さんです。開発のヒントになったのが、常連客から聞いた「焼き芋を甘酒に漬けて焼くとおいしい」という話でした。

「うちの甘酒は、ノンアルコール、ノンシュガーなので、赤ちゃんからお年寄りまで飲むことができます。その甘酒を使い、岡谷が普及を図るシルクスイートを使ってみたいという思いから開発が始まりました」

 

ただ、商品化までは試行錯誤の連続だったそう。当初は甘酒に漬け込んでから焼いていましたが、硬くなってしまうのが難点でした。そこで、半年ほど改良を重ね、サツマイモを焼いた後に塗り込んで再び焼く現在の製法に。甘酒は糖度が高いため焦げやすい分、その香ばしさや旨みが乗った皮こそおいしいのだと慶子さんは言います。

▲「食べ方はお客様のお好み次第ですが、皮ごと食べるのがおすすめ」と慶子さん

また、開発過程ではスタッフ全員が関わり、楽しみながら新商品を生み出せたことも意義深かったと慶子さんは振り返ります。

「自分も含めて、外出も行事も楽しめない状況が続く中、誰もがつらい思いをしているなら、みんなで仕事を通して楽しいことをしたいと思っていました。焼き芋好きなスタッフもいることから、サツマイモの選定から、製法の違い、甘酒を塗ってから焼くまでの時間など、みんなでいろいろな角度からテストし、試食を繰り返しました。日々の製造業務だけでなく、スタッフと一緒に新たな企画の立ち上げや商品開発をしたいとの思いが叶いました」

▲2023年8月には、店前に自動販売機も設置。いつでも甘酒焼き芋や生こうじ、甘酒、味噌が購入できるように。

▲自動販売機のイラストやキャラクターの設定もスタッフが担当。

 

そんな慶子さんが、次に見据えている新たな取組が、宿泊型の味噌・こうじ造りの体験サービスです。2022年にはモニターツアーを開催し、8割以上の参加者から高評価を得たのだとか。

「以前から、こうじの製造現場には高い価値があると思っていました。独特の香りや感触も音も、ここで生まれ育った人たちには普通のことですが、嫁いできた私にとっては、芸術的にも文化的にも伝統としても素晴らしいと感じていたんです。このクオリティの高さを多くの人に知ってもらう機会があったら、と思っていた中で、考えついたのが体験ツアーです」

ツアーのテーマは「体感を取り戻す」。老舗店のこうじの可能性の追求は、まだまだ続いていきます。

 

若宮糀屋
住所:岡谷市大栄町2-10-12
電話:0266-22-2930
https://www.wakamiyakoujiya.com/

※この記事は2023年9月時点の情報です。

 
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