【特集記事】麹が拓く食の新たな可能性
vol.1 簡単、おいしい、健康的。麹のある暮らしをもっと身近に!
2023.09.15
有限会社西麹屋本舗6代目
こうじ専門店「24koujiya(にしこうじや)」
西澤 義弘さん(右)・真澄さん(左)
日本一の味噌の生産量を誇り、全国2位の78軒の酒蔵がある発酵王国の長野県。そんな味噌や日本酒のほか、醤油やみりん、酒、酢など、発酵調味料の醸造になくてはならないのが「麹・糀(こうじ)」です。
こうじとは、温暖で多湿な日本の気候風土の中で育まれたこうじ菌を、蒸した米や麦、豆などの穀物に付着させて繁殖させたもの。こうじ菌は多くの酵素を生成し、そのはたらきで素材をやわらかくしたり、発酵食品の旨味や甘味を引き出したりすることから、古来、日本の食文化に大きな影響を与えてきました。2006年には、日本人が大切に育んできた貴重な財産として、日本の国菌に認定されています。
こうじの中でも、稲作が盛んな日本で最もポピュラーで使い勝手もよいのが米こうじ。米由来の自然な甘味やまろやかさがあり、発酵によって食材本来の旨味や風味、コクを引き出すほか、保存性や栄養価を高める力を持ちます。
そうした「こうじをもっと身近に感じてもらいたい」と、2020年にこうじ専門店「24koujiya」をオープンしたのが、「西麹屋本舗」6代目、西澤義弘さん・真澄さん夫妻です。
江戸時代に創業し、善光寺七名物といわれた甘酒や酒饅頭に使われる米こうじを現在に至るまで卸す歴史を持つ老舗。今も昔ながらの手作業のみの製法を引き継ぎながら、米こうじを造っています。
店内には、米こうじを使った商品がずらり。豊富な品ぞろえとおいしさの評判を聞きつけ、遠方から足を運ぶ人も見られます。
「こうじは日持ちの程度がわからず、使い方が難しいとよく言われますが、醤油こうじは刺身に付けたり、卵かけご飯や目玉焼きに乗せたりと、醤油代わりに簡単に使えます。塩こうじは肉や魚に塗って焼くだけで素材のおいしさが引き立ちますし、トマトソースやミートソースに少し足すだけで味の深みが増します。醤油や塩の代わりの調味料として使うことができ、料理がおいしくなるうえに、健康にもよいという魅力を知ってもらえたら」
こう話すのは「24koujiya」のアレンジ商品の生みの親、真澄さんです。その言葉通り、西澤家では毎食、塩こうじの野菜の浅漬けや、砂糖代わりに甘酒を加えたヨーグルトなど、こうじを取り入れた料理が並び、祖父母から小学生まで三世代が楽しく食卓を囲んでいるそう。
とはいえ、先祖代々、米こうじ造りに励んできたDNAが刻まれた義弘さんと異なり、2011年に結婚するまで、こうじとはほぼ無縁だった真澄さん。当初はこうじの使い道も知らなかったそうですが、塩こうじや甘酒の一大ブームが起きた忙しさの中でも、常連客から使い方を聞き、子どもが小さな頃は育児をしながら発酵に関するあらゆる書籍を読み進めるうちに、次第に発酵の奥深さに魅了されていったと言います。
こうしてどんな料理にもこうじを加えることが当たり前になって生まれたのが、数々の塩こうじのアレンジ商品です。
2019年には、市内の手作り市で販売するように。すぐに話題になり、翌年、工場近くの土地が空いたのを契機に一念発起し、ショップを立ち上げました。
「こうじは保存環境で味わいが異なるのも特徴です。店頭なら保存方法もすぐに伝えられますし、自分で発酵の進み具合の感覚を養ってもらえたら。この店が、こうじの楽しさを知ってもらうコミュニティの場になればいいですね」(真澄さん)
発酵の力で料理のおいしさも栄養も高めてくれるこうじ。気構えず、楽しく気軽に日々の生活に取り入れ、心も体も喜ぶ豊かな暮らしを始めてみませんか。
こうじ専門店「24koujiya(にしこうじや)」
住所:長野市柳原1893-6
電話: 026-217-1929
https://www.nishikoujiya.com
※この記事は2023年9月時点の情報です。