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【特集記事】踊らまいか! 信州の風流踊
vol.1 一遍上人が創始した 「踊り念仏」を受け継ぐ「跡部の踊り念仏」

跡部踊り念仏保存会
会長 伴野 則行さん(中央)
顧問 北村 東巳さん(左)
顧問 廣岡 豊さん(右)

踊りながら太鼓や鉦(かね)を打ち鳴らし、念仏を唱えて恍惚無我の境地に入ることで極楽往生を願う「踊り念仏」。鎌倉時代に時宗の開祖、一遍上人が全国を遊行して民衆に広めたとされ、盆踊りのルーツともいわれる民俗芸能です。

その流れをくむとされるのが、佐久市跡部で地域住民によって継承されている「跡部の踊り念仏」です。始まりは弘安2 (1279)年の冬。全国各地で念仏信仰を進めていた一遍上人が、善光寺参詣の帰路、承久の乱に巻き込まれて佐久の地に配流され没した伯父の墓参のために、現在の佐久市を訪れました。その際、念仏供養を行ったところ、人々の心が澄んで信心が湧き起こり、自然と念仏を唱えながら踊り出したことが起源とされています。

封建制度のもと厳しい主従関係が存在していた時代において、貴賤を問わず、誰もが踊りながら念仏を唱えることで法悦を得て、極楽往生がかなうとされた明快な教えは、抑圧されていた庶民の心を引きつけました。そして、佐久地方一帯から全国へと普及。佐久地方では、定期市である「伴野の市庭」 (佐久市跡部) が踊りの場となったことから、この地が中心になっていったと考えられています。

▲重要文化財『紙本著色一遍上人絵伝 巻第二(金台寺本)』に描かれている佐久郡伴野荘の「伴野館」での踊り念仏の様子(東京国立博物館に寄託中)

娯楽への統制が厳しかった江戸時代でも踊り念仏の伝統行事は許され、旧暦の正月や2月に5日間かけて行われていたとか。当時の「跡部の踊り念仏」には近隣の79の村から参加があるほどにぎわったことが記録に残されています。

▲「跡部の踊り念仏発祥の地」の碑の近くにある「跡部老人憩いの家」にはその歴史を紹介するコーナーも

こうした踊り念仏の貴重な原型を今に伝えるのが「跡部踊り念仏保存会」です。第二次世界大戦で中断してしまった踊り念仏を復活させようと呼びかけた公民館活動が発端の保存会で、復活公演は区民の総意により、昭和27(1952)年、地区の寺院「西方寺」で行われました。会長の伴野則行さんは、復活した背景を「文化継承の使命に加え、終戦後の娯楽が少なかった時代、人々が踊る楽しみやコミュニケーションの場を求めていたことが強かった」と話します。

▲毎年4月に本堂で定例会が行われる「西方寺」

復活公演は農繁期前の4月に開催されたことから、現在は毎年4月第1日曜に同寺の本堂で定例会が行われています。本堂に浄土と見立てた二間(3.38m)四方の道場(舞台)を組み立て、中央に2基の太鼓を設置。2人の太鼓方の音頭に合わせ、8人の踊り手が「南無阿弥陀仏」と唱えながら鉦を打ち鳴らして太鼓の周りを踊ります。

▲本堂に組む道場は周囲に49本の塔婆と4基の鳥居門を立て、屋根を白布で覆い、上部に魂の飛び立ちを表現する鳳凰を掲げる

厳粛な念仏和讃(わさん)の合唱から次第にテンポが加速。踊りが激しさを増していき、踊躍(ようやく)歓喜から宗教的陶酔や恍惚感をもたらす流れは、身を清めて極楽浄土で先祖を慰め、生まれ変わって現世に戻り、苦しむ他人をも救済することを意味し、踊り念仏の創始の姿が息づいています。

▲8人1組の踊り手は紫の無地の着物に「南無阿弥陀仏」と書かれた白襟をつけ、太鼓のリズムに合わせて踊る

最後には参列者に福を分かち合う知恵団子の配布も。地元の人たちによって用意された三色団子で、地域で伝統文化を支え続け、かつて庶民の楽しみのひとつとされた貴重な日本の伝統芸能を今に伝えています。

一方で時代が変わり、遊びが多様化した現代は、後継者の確保や育成が課題です。保存会では平成19(2007)年から、地域の小・中学生を対象に踊り念仏を伝える体験学習活動を実施。今回、ユネスコ無形文化遺産に登録されたことは継承活動のひとつの後押しになったそうで、「踊り手からは『いっそうやりがいを感じ、仲間も誘いやすくなった』 との声が挙がっています」と顧問の北村東巳さんは話します。

▲定例会で行われる子ども踊り念仏の練習の様子

一遍上人が創始した歴史的価値と、その文化を伝える人々の情熱が国際的に認められたことは、後世につないでいく上で地域の大きな励みになっています。

 

跡部踊り念仏保存会
住所:佐久市跡部424(西方寺)
電話:0267-63-5321(佐久市教育委員会)

 

※この記事は2023年7月時点の情報です。

 
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