【特集記事】信州の肉を喰らう!《第2弾》
vol.3 明治創業の老舗が伝える温故知新の郷土の味
2022.12.15
満津田食堂
松田 道彦さん・真理子さん
南信州の食肉文化は、焼肉だけに尽きません。南信州は農耕馬の産地でもあったことから、馬肉料理が浸透しているのも特徴です。特に馬の腸をじっくり煮込んだモツ煮「おたぐり」が食べられるのは、この地域ならでは。草食動物である馬の長い腸を洗う際、たぐり寄せたことが料理名の由来で、独特の風味があるので好き嫌いが分かれますが、地元では酒のつまみとして好んで食べる人が多いそうです。
そんな「おたぐり」を提供する老舗料理店が、明治20(1887)年創業の「満津田食堂」。明治時代に発生した大火で市街地の多くの飲食店が移転してしまったなか、同店は今も創業当時から変わらぬ場所で営業を続けています。
「長年、鯉料理専門店でしたが、地元の需要に応え、先代の父が少しずつ飯田・下伊那地域でしか味わえない料理を提供するようになりました」
こう話すのは、5代目の松田道彦さん。妻の真理子さんと二人三脚で地域に根づく食文化を伝えています。
先代が鯉料理以外の郷土食を始めたきっかけは、中央自動車道の開通(1975年:駒ヶ根IC ~ 中津川IC開通)だったそう。旅人が訪れるようになったことから、より土地らしいものを提供したいと考え、馬刺や蜂の子、ざざ虫などの郷土料理を提供してほしいとの周囲の声に応じました。「おたぐり」も道彦さんの幼少期には店のメニューになかったそうですが、先代が始めたもののひとつです。
「時代に応じてメニューを変えながらも、地元食材を大切に郷土の味を守ってきました。南信州は食材料が豊富な地。料理人としてはやりがいがありますね」
そんな道彦さんの言葉どおり、店では鯉料理や「おたぐり」、馬刺など土地の味を一度に楽しんでほしいと、定食としても提供。馬刺は鮮度を大切に、信頼のおける取引先から仕入れるなど流通ルートにもこだわっています。また「源助かぶ菜」や「下栗芋」など、地元でしか手に入らない信州の伝統野菜を可能な限り使うことも道彦さんの信念です。
歴史のなかで育まれた食肉文化と郷土の味覚が、地域の魅力となって広がっています。
満津田食堂
住所:飯田市主税町1
電話:0265-22-0437
https://www.matsudashokudou.com/
※この記事は2022年12月時点の情報です。取扱商品等は変更になっている場合がございますので、ご了承ください