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信州ブランドアワード2022
NAGANO GOOD DESIGN 部門 部門賞
「KI-no(キーノ)シリーズ」

NAGANO GOOD DESIGN 部門 部門賞
「KI-no(キーノ)シリーズ」 

地産材を使ったインテリアプロダクトで
木の価値について考えるきっかけを

大澤建築店株式会社(松本市)
取締役副社長・二級建築士 渡邉史康さん

伐採コストや製材コストとの兼ね合いによる間伐材の搬出作業の困難、猟師の減少などで進む野生鳥獣による食害など、日本の山林が抱える問題は年々深刻化しています。

地場の木材をメイン素材に使ったインテリアプロダクトをきっかけに、森林にまつわる問題に目を向け、木の価値を共に考えてほしいとの願いが込められたプロジェクト「KI-no」。“Beyond The Japanese Creation”をコンセプトに、松本市で国産材・県産材にこだわった日本建築を手がける工務店・大澤建築店株式会社代表で数寄屋大工の棟梁・大澤伸章さんと、同社の副社長で大澤さんの実弟であり、二級建築士の渡邉史康さん、柳沢林業の副社長で杣人(きこり)の高力恒次さん、都内のアパレル会社・irie株式会社代表取締役で「KI-no」ディレクターを務める尾藤泰崇さん、4人のメンバーで2022年にスタートを切りました。

大澤建築店3代目にあたる大澤さんは、京都の数寄屋大工・中村外二さんに弟子入りし、学んだ知識を生かして家業を後継。自然のままの材料を好んで用い、木を生かす数寄屋造りの空間づくりに、高い技術力と経験、アイデアを発揮してきました。一方で、適した木材の入手が困難なため、杣人と連携し、一緒に山林に入って適材を見つけ伐採してくることも。「Ki-no」プロジェクト設立も、実際に大澤さんと渡邊さんが高力さんと山に入ったことが発端でした。

「雪の重みで根から曲がった“根曲がりスギ”を家づくりに使いたいと希望したお施主さんのために、小谷村の山林に素材を探しに行きました。すると、伐採期を迎える木は生えているのに、斜面の傾斜が強いことから伐採後の搬出に経費がかけられず、木が放置されている現状を知ったのです。このままでよいのかと疑問を抱きました」

こう話すのが、プロダクトデザイナーでもある渡邉さんです。20代前半にイギリス・ロンドンで留学した際に、主体性を持って自分の考えを発信する同地の若者たちの姿勢に刺激を受けるとともに、日本の木造建築の美しさを改めて実感。荒廃しつつある日本の山林の問題を提起し、議論するきっかけが必要だと考え、留学時代の仲間だった尾藤さんと「KI-no」を立ち上げました。

「建築の仕事をしている中で、森の現状をお施主さんには直接伝えることができても、その人数は1年間で数人と限られています。もっと多くの人と一緒に考えるためには、地元の山と木を知る私たちが、海外からの輸入材ではなく身近にある国産材や県産材を使って職人技や地産材を生かしたプロダクトを作り、山林の事情を伝えて議論するモデルケースをつくらなければと考えたのです」

ブランドのファーストシーズンにあたる2022年のテーマとしたのは、長野県内の山林で特に深刻化している「PINE WITHERED(マツ枯れ)」。マツが集団的に枯れてしまう問題に対し、多くの日本人に関心を持ってほしいとの思いを込め、マツ枯れの被害に遭う前に伐採したアカマツを活用したローテーブルを製作しました。分解してコンパクトに持ち運びができる構造で、室内でもアウトドアでも使えます。

木材の傷を埋めて光も透過するレジン(樹脂)を使ったLEDランタン用シェードやシェラカップのリッド(蓋)などの小物を製作。狩猟者の減少で深刻化している野生動物による食害問題を考えたいとの思いから、鹿が好んで樹皮を食べてしまったリョウブの木とレジンを使ったシェードなど、デザイン性にも優れた独特な雰囲気のプロダクトが誕生しました。

「アウトドア関連の商品を開発したのは、野外活動が好きな人は自然を身近に感じる機会が多い分、私たちと一緒に考えてもらえる可能性が高いと感じたからです。例えばサーファーは率先して海岸を掃除し、高価でも自然由来のワックスを使うなど、環境に配慮した行動が見られます。山林においても、同様の流れを喚起するブランドをつくりたい、『KI-no』のプロダクトを手にしてもらうことで、地場の木のよさを感じてもらい、人が山から離れている問題を考えたいと思いました。つまり、国産材や県産材を通して日本の森林の価値を考えるブランドです」

アウトドア商品のほかにも、傷ついた樹木に侵入した雨や菌、カビなどが繁殖して黒い網目状の模様が浮かんだスポルテッド材のテーブルも製作。自分たちが格好いいと感じるデザインをベースにしたプロダクトが、多くの人にとって山林の事情を考える契機になったら、と渡邊さんは話します。

「『KI-no』のプロダクトを手にしてくれた人が、いつの間にか自然環境に貢献していたというようなスタイルが理想です。それに、消費者だけでなく同業者にも私たちの活動を知ってもらい、その思いに共感したデザイナーが新たにプロダクトを作るなど、成長していけるブランドでありたい。山はかつて人の手によって自然な流れで整備されてきて、今はさまざまな問題が生じていますが、そもそも山はそんなに弱いものなのでしょうか。そうした思いを、『KI-no』に興味を持つ人たちと共有できたら」

そのきっかけのひとつとして「信州ブランドアワード」に応募したと話す渡邉さん。

「受賞することで、これまで『KI-no』を知らなかった幅広い世代にブランドを知ってもらい、知名度を上げていくことで、多くの人に当社の活動を届けることができたら。そして、私たちの関わりがなくても地産材が循環するかたちを考えていけたらと思っています」

素材のストーリーを大切にしたデザイン性の高いプロダクトで、地域の林業にイノベーションを。「KI-no」の取組みを機に一人でも多くの人が山林の現状に関心を持ち、社会全体が問題に目を向ければ、少しずつでも着実に日本の森林の状況は変わっていくことでしょう。

 


 

大澤建築店株式会社
長野県松本市笹賀5652-68
0263-25-5678

https://oosawa-kenchikuten.info/

https://ki-no.works/

※この記事は2022年6月時点の情報です。取扱商品等は変更になっている場合がございますので、ご了承ください

 
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