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【特集記事】踊らまいか! 信州の風流踊
vol.3 ダイナミックな躍動で新仏供養と無病息災を祈る「和合の念仏踊」

和合念仏踊保存会・ 南信州民俗芸能継承推進協議会
会長 平松 三武さん

阿南町内で最も深山幽谷の地にある和合地区で、お盆の時期に行われる「和合の念仏踊」。ダイナミックに飛び跳ねて躍動する踊りが特徴で、急傾斜地で暮らし、農作業に追われる生活を送っていた地域の人々にとって、1年で一番楽しい行事だったともいわれています。

その歴史は諸説あり、一説によると、寛保2(1742)年、この地区の開祖といわれる宮下家の15代目が江戸へ免訴願いに出た帰り道に川中島(現在の長野市)に立ち寄り、村の土産にと習い覚えて村人に伝えたとされています。しかし、近年の研究では、開祖家である宮下家の出身地・遠州に伝わる遠州大念仏と踊りのかたちが似ていることから、遠州から伝えられたとも考えられています。

踊りは8月13〜16日の4晩にわたって行われます。舞台は、高台にある林松寺と村社の熊野社、大屋(宮下家)の3か所。初日と最終日には先祖供養と五穀豊穣、無病息災への願いを込めてすべての舞台で念仏踊が行われます。

踊りの構成は「庭入り」、「念仏」、「和讃(わさん)」の3部で、中心ともいえるのが「庭入り」。ゆったりと厳かに始まって次第に激しさを増し、6~7人が太鼓を打ち、かん高い鉦(かね)や笛の音に合わせて、裸足のヒッチキ(2人1組の踊り手)が互いの体をぶつけ合いながら、ところ狭しと跳ね踊ります。エネルギッシュな10分余の踊りは見る者を圧倒します。

紙垂(しで)をつけた菅笠をかぶった男たちが激しく跳ね踊る。死者の霊を呼び寄せ、仏とともにある喜びを表現したものといわれている

▲紙垂(しで)をつけた菅笠をかぶった男たちが激しく跳ね踊る。死者の霊を呼び寄せ、仏とともにある喜びを表現したものといわれている

中日の14日と15日は新仏供養のための行事で、新仏の位牌を集めて林松寺のみで奉納。「和讃」は新仏の年齢に応じて行われます。

また、中日には念仏踊の前に盆踊りが行われるのに対し、最終日には念仏踊の後、夜が更けるまで盆踊りが続きます。

ところで、昨今は無形民俗文化財の担い手の高齢化が各地で課題ですが、「和合の念仏踊」は少し状況が異なります。実は和合地区の小学校は親子山村留学が盛んで、若い移住家族が力強い継承者となっているのです。山村留学の移住者のなかには、念仏踊の参加を目的としている家族もいるのだとか。その活気は、近年、さらに高まっていると「和合念仏踊保存会」兼「南信州民俗芸能継承推進協議会」会長の平松三武さんは話します。

「短い法被にパンツ姿で舞う踊り手は、30人は必要です。私が会長に就任した15年前ほどは人数がギリギリで、このままでは女性にも頼まなければいけなくなると困っていましたが、今は地区の在住者だけでも踊り手が60人。ユネスコ無形文化遺産登録によって若手の意欲はより増していますし、外からの関心も高まっていると感じますね」

会長の平松さん(右)と、宮下家次期(29代目)当主に当たる阿南町教育委員会の宮下善太さん(左)

▲会長の平松さん(右)と、宮下家次期(29代目)当主に当たる阿南町教育委員会の宮下善太さん(左)

しかし、南信州全体を眺めると、祭りの後継者不足はコロナ禍でより深刻化しています。そこで「南信州民俗芸能継承推進協議会」は、後継者育成と未来への継承のために企業に支援を仰ぎ、従業員に民俗芸能への参加を推奨してもらうなど、全国的にも珍しい事業を立ち上げました。未来に残すべき貴重な資産を地域全体で支える取り組みが、新たな息吹として伝統文化を盛り上げていきます。

 

和合念仏踊保存会(下伊那郡阿南町和合)
電話:0260-22-2270(阿南町教育委員会)
https://mg.minami.nagano.jp/(南信州芸能ナビ)

 

※この記事は2023年7月時点の情報です。

 
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